ディア・ドクター

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「ディア・ドクター」原作・脚本・監督西川美和。
製作エンジンフィルム他。ラインP秋枝正幸。
 この西川という女監督は、不良である。
「ゆれる」についで地方都市のど田舎が舞台で僻地医療の話
となれば、今日の日本社会の現実を切り取って鮮やかに物語
にしてみせるまじめな映画かなと思ったら大間違い。
 鶴瓶の人なつこい顔にだまされそうになる。だから予告で
もこの映画の正体を見せないできたのか・・
本当に知らないでチラシだけで観ると山田洋次が「同胞」な
どでやった地方の村の現代日本を見せられると思ってしまう。
西川美和監督は、この自分の原作が直木賞候補になったぐら
い脚本はなめらかだ。
この人は、文士だと思う。欠点は、監督としてはまだまだ
発展途上だということ。その証拠は、カッティングにある。
鶴瓶の田舎医者に新人の研修で若い瑛太が赴任して村での
医療と人の生活にスポットが当てられるとどうしてもコメデ
ィタッチを連想してしまうし、実際西川はこの映画のクライ
マックスがかなりショッキング的な方向にゆく分前半を
コメディタッチで描いている。
しかしこのタッチがイマイチ難しい。
それは、ファーストシーンから医者が逃げて警察が探して
いる件もカット、特にリアクションカットが間延びしている。
もちろん笑いのカットだからカット尻をわざと長くしている
のはわかるが、間のつなぎが悪い。
それは、喜劇を理解しているかどうかだと思う。
西川監督は、人間の中に渦巻くあやしいマグマに興味があっ
て前半は、付け焼き刃の感がする。
刑事が2人、忽然といなくなった僻地医者たる鶴瓶を追って
訪ね歩くシーンと鶴瓶医者が村人によって頼りにされて八千草
薫のおばあさんの胃痛の診断をめぐってどうして疾走してし
まったかのメインシークェンスが同時進行で飽きさせずぐい
ぐい引っ張っていく構成がしたたかでうまい。
脚本は、うまいが映像にピタっと来ないのだ。
喜劇は、テンポと日常から欠落するズレの面白さだ。
それがど真ん中のボールを拾うところで少し場違いな感じ
がした。
僻地医療と老人の性と黒澤的な師弟愛も出来たはずだった。
あえてそれをやらず自分の性癖の方へと傾いて行った。
それはそれでこの監督の新しい畑でユニークで文句のいいよう
がない。日本映画になかった女流の不良で優等生な映画監督だ。
キャスティングはみんなうまくいっていた。
西川さん、あとは、笑いの画面をどうつくるかだ。
それができて商業映画の監督である。
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by stgenya | 2009-07-31 23:45 | 映画・ドラマ
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