あの日、欲望の大地で

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「あの日、欲望の大地で」The burning plain
脚本監督ギジェルモ・アリアガ、2929プロダクション他。
出演シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー、ジョン・コーベット
   ジェニファー・ローレンス(M・マスチエロヤンニ新人賞)
 今やハリウッドの売れっ子脚本家になったアリアガの初
監督作。燃える平原が原題。そのとおり心の隅についた傷
がいつまでも燃え続ける愛と情念の物語。
人はそこから果たして逃げられるか。
ベンダースの「パリテキサス」と同じ愛の荒涼を旅して夫婦
の桎梏を描いているが、あのとき脚本を書いたサム・シェパ
ードの世界を彷彿させた。
ただそれをアリアガは独特のパズル構成ドラマにした。
 レストランの有能なマネージャー・シルビアがはじめに
男遍歴を繰り広げる。それは、性欲のため。
さらに海辺で自分の股に傷をつける自傷行為をする。
ここの美しい彼女をめぐって三人の男の視線が絡むところ
は、秀逸。このコック、店の客、メキシコ人とめぐっていく過程
が過去の母親の不倫と子供時代のその不倫相手の息子と
のはじめての恋と妊娠そしてメキシコで農薬散布を飛行機
でやっていて事故に遇う父を目撃する少女との四つのエピ
ソードがカットバックのように無造作につながっていく。
 ここが巧みに構成されて一瞬混乱しそうだがアリアガマジ
ックで自然に物語の確信へ旅することができる。
普通映画の回想は、カットつなぎに古典的なOLなどのトラ
ンジションや日付や象徴的な小道具が使われる。
ここに監督の個性やこだわりを見ることができる。
「バック・トゥザ・フューチャー」のカレンダー。
「無法松の一生」の車輪の回転のダブラシ。
しかしアリアガは、そんなものを一切使わずカットつなぎで
編集している。するとどういうことが起きるかと言うと
各シークェンスの配置が問題になる。ファーストシーンの
荒野でトレーラーハウスが燃えるところからはじまり、
その火の中で男と交尾してまま死んだ母親の娘の現在
のレストランマネージャー・シルビアの心の荒野へとつな
げてその母の不倫がどうして始まったのか、娘だった
自分はどうやって性を知ったのか、そしてさらに自分が
メキシコで産んだ娘とどうやって心の蹉跌を解いて再会
するのか、と言ったシルヴィアの心の揺れに沿って、
シナリオが構成されている。
 だから混乱なく燃える心の荒野の真相にサスペンス劇
を見ているように導き出されるのだ。
これは、もはや職人芸といえる。
不倫をする母親役のキム・ベイシンガーの中年女の生
な渇望は、リアルで切ない。
しかもその要因もちゃんと用意されている。
ラストの娘が重症の父・別れた夫の元へシルヴィアを
呼ぶシーンには救いがあってほっとする。
人間は、誰もが過ちを犯す。
そしてその過ちをどう心の中で清らかな灰にするために
燃やしていくか。
エンドタイトルが終わっても、あの、娘マリアーナの炎
を前にした絶叫は、脳裏に焼きついて離れなかった。
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by stgenya | 2009-10-02 16:35 | 映画・ドラマ
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