人生の特等席

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「人生の特等席」Trouble with the curve 制作マルパソ・プロ
監督ロバート・ロレンツォ、脚本ランディ・ブラウン
主演クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス
 クリントの監督作ではないけど、今までのクリント・イースト
ウッド色の継承作。だから「グラン・トリノ」を観てよかった
人には、そう外れない仕上がり。
目も見えなくなった野球の老スカウトマンの話である。
まず日本語のタイトルがうまくつけたなと思う。
特等席ってそう座れない。
ましてや人生で特等席に座れるチャンスってなかなかない。
しかもよく考えれば特等席で野球を観るということは、
野球の選手じゃないということ。
あくまで傍観者だ。華やかなベースボール・プレーヤーに
なれなかった人。観客席でも地方の高校野球のネット裏。
ビジネスホテルを渡り歩く生活。
そんな男が、妻を失い、ひとり娘を6才にして親戚や孤児院に
預けて裏街道のスカウトマンの地方周りの人生を送る。
しかし娘は弁護士として大人になる。
 この特異な父娘の関係を静かに、オーソドックスにそして
娯楽の色逃がさずに映画にした。
これは、けっこう簡単なように見えてそう簡単に出来ない。
映画が二本立ての頃は、こういう映画は時々日本でもあった。
華やかではないが見終わった後なんとなく心にA面よりB面
の方が残ったというもの。
俳優がクリント・Eだからまた見せる。その枯れに枯れた
演技に娘のエイミー・アダムスもよく体当たりしてまず
最後まで見せる。頑固で決して曲げない、しかも過去に
抜き差しならないキズを抱えて孤独に生きている男を見事に
今回も貫いて演じてみせるクリント・イーストウッド。
 この映画の良さは、脚本にある。教科書的なシナリオだが
セリフにも構成にも神経を使って書き込まれている。
ネタばれになるから言えないが、娘が有能な弁護士で出世の
かかった仕事をしているという設定と疎遠な父親が老齢で
目が悪くなり生涯つづけてきた仕事を失うかもしれないと
いう設定で娘を父親の最後になるかもしれない仕事に付き
添わせるという発想が話の妙である。
ピザ屋の豪速球の少年や元野球選手で怪我でスカウト
マンになったクリントの後輩の配置の仕方など手垢が
ついた手法だがキチンとやっている。
実験作をやるのでなければ、今年の邦画のシナリオは、
ここも作っていないものが多すぎる。ご都合な脚本になら
ないためには俳優の領分をセオリーの枠に設けているか
どうか。クサいがその展開でそのセリフをうまく俳優が
ノレて言えるものかどうか。ここが分かれ目だ。
 このランディ・ブラウン脚本とロバート・ロレンツォ
演出はそこに神経をつかってこの映画をつくっている。
それを制作者として俳優としてクリント・Eが
かなりアドバイスしているのではないだろうか。
それは、また長年クリントの映画の助監督を努めて
来た若いR・ロレンツォにクリント・イーストウッドが
与えた初監督という特等席ではなかったかと思う。
丸の内ピカデリー、二週目の土曜の昼で六割の客。
圧倒的に高齢者だったが、みんな満足そうに有楽町
のレストラン街へ見終わって足を運んでいった。
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by stgenya | 2012-12-10 03:56 | 映画・ドラマ
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