純情の都

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「純情の都」(1933年PCL)
原作島村龍三、脚本松崎啓次、監督木村荘十二、
出演竹久千恵子、千葉早智子、堤真佐子、大川平八郎、
徳川夢声、古川緑波、藤原釜足、岸井明、丸山定夫・・
 まずこの映画が80年前のトーキー初期の映画である。
しかしこの映画のファーストシーンからスタイリッシュで極めて
無駄がなく、都市生活者の青春群像といい、今見ても
斬新でポップであり、疾風のごとく男と女と若さと未熟さとを
ものすごい速さで駆け抜けて描いている。
 いま観ても切実でかっこよく粋で少しも古びていない。
この映画が現在残っていて観られることに感謝したい。
いかに映画の初期の人たちの志が高かったか、敬服する。
話が悲劇的にあっという間に終わることに違和感を感じる
ひとがあるかもしれないけど1970年代のアメリカンニュー
シネマを見ればみんな悲劇的なラストになっている。
それは、時代のペシミシズムと思えば映画としての質に
影響を与えない。
 話は、和風美人の千葉早智子とモガで男言葉を話す美女
竹久千恵子のルームシェアの現代的な生活に職場の上司
や同僚の男の言い寄りが波風をたてて、藤原釜足や堤など
の遊び仲間と新店舗でのショーの成功と並行していたずらな
すれ違いから千葉が貞操を奪われるという青春の無軌道と
現実を描いている。
千葉は、上司の徳川夢声にいう。
「あたしたち、同性愛じゃないのよ」
 これは、言ってみれば永遠のテーマでもあり、今でも何回
となく繰りかえし描かれる青春映画の王道でもある。
「勝手にしやがれ」「突然炎のごとく」「ファイブ・イージー・
ピーセス」「八月の濡れた砂」「セックス&シテイ」など・・
 そして驚くのが当時のフランス映画影響を受けてか、都会
の夜明けから夜更けまでの帝都の東京の描写がどこまでも
洋風でビルにマンションに紅茶にパンの朝食、若い登場人物
は、みんなモガモボ。かっこいい。
まるでルノワールやルネクレールの映画を見ているようで
今これだけ日本でスタイリッシュな東京を撮れる監督もカメラ
マンも想像つかない。
 それからこの島村龍三の原作は、「恋愛都市東京」といい
新宿ムーランルージュで同じ竹久千恵子で舞台化されたもの
だった。明治製菓店でのレビューダンスもムーランそのもので
ムーランのテイストが色濃く記録されて貴重である。
そのうえこれで映画デビューする竹久、颯爽とした徳川夢声
やロッパを見ることができる重要な作品でもある。
映画をめざす若い人は、必見の一本といえよう。
それにしてもこの映画をFCで原作者でムーラン初代文芸部長
だった島村龍三の娘さんとそのお孫さんたちと観た。
いや、今観ても新しいですね。というと娘さんは、80年前の父親
のキラキラした青春を感じ、25年前に亡くなった父への再会と
感動を胸に涙ぐまれていた。
作家は、小説であれ、映画であれ、永遠に情熱の爪痕を世に残す。
映画は、美も俗も切り取って100,200年と後世の人にみせてくれる。
「純情の都」をシネスウイッチ銀座当たりで「突然炎のごとく」と二本立て
でロードショーしてくれないものか。
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by stgenya | 2013-11-25 16:20 | 映画・ドラマ
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