博士の愛した数式

本屋さんが一番愛した小説「博士の愛した数式」の映画化。
脚本監督が黒澤組の小泉尭史。62歳。
「雨上がる」「阿弥陀堂だより」につづいて3作目。
 原作にないルートの成長して数学教師になった設定から
物語を語り、数学の友愛数とか完全数とかの説明も
できるというシナリオのアイデアを監督は考え付いた。
 吉岡君のこのルート教師は、なかなかよかった。
寺尾聡の博士の役もなるほどなあと思った。
実は、これが出版されたとき映画化すると誰がやれるか
と思ったものだった。メモをいっぱい貼り付けた初老の
記憶障害者を下手にやると浮浪者にしか見えない。
 しかし学者と義姉との不遇な過去をもった男としての
悲しみも過度にならず表現していた。
 深津はどうだろう。悪くないがもっと女としての表現の
幅があってもよかったのではないか。
母子家庭で家政婦で働いている三十女の見つけた
友愛数はルートの野球熱から博士へ広がって、
意識下か擬似的にしても人を愛し、尊敬することの
喜びを孤独な女として目覚めていく過程がもっと深く
掘り下げていってほしかった。
 それは監督の力量でもあり、この作品の醍醐味で
もあったはずではないのだろうか。
ここが日本のテレビ文化で育った女優の限界かもしれ
ない。きれいにさわやかにだけでは感動はよばない。
またこれを黒澤さんだったらどう脚本を書いただろうか。
 もっとはじめの博士の面倒をみる家政婦が何人も
辞めるところからはじめて、数について杏子が興味
をもつところから野球で熱を出すシークェンスまで
の杏子の変化を面白く構成できたんじゃないだろうか。
 「生きる」の役所の陳情の件りや「赤ひげ」の加山
と入れ替わりで辞める若い医師が赤ひげのことを
悪くいう件りなど・・・
 こうした起伏のある本にした方がもっと感動できた
ように思う。何より浅丘と寺尾博士の関係がセリフで
なくほんのり判るようになる工夫もほしかった。
まじめに丁寧に撮っているだけに悔やまれる。
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by stgenya | 2006-02-01 15:25 | 映画・ドラマ
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