SAYURI

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 封切り当時この映画は、日本を描いた別物と思えば楽しめるみたいなことを
言うマスコミ関係者がいたが、映画として観て正直に感動しなかった。
 漁村で置屋に売られた姉妹が離ればれになり、売れっ子の先輩芸者
コン ・リーのいじめからやがて人気芸者になるまでの半生を
チャン・ツィーが演じている。
 まずスピルバーグがこれを随分前から映画化したいと「夢」を
撮っていた 黒澤明に相談していたことがあったが、なぜこれを
映画化したかったのか、このロブ・マーシャルの映画から伝わってこない。
 奴隷市場のような花街(これは、原作者アーサー・ゴールデンとモデルの
岩崎峰子との名誉毀損の裁判で岩崎さんが03年に勝訴した項目の
ひとつだった)から子供の頃助けてくれた会長の渡辺謙との純愛で
救われる物語にしようとしているようだが、はじめに
医者に身請けされるシークウェンスで渡辺とさゆりとのこころの交流が
ちゃんと描かれてないからそのあと戦後のアメリカ人や役所広司との
葛藤も曖昧になっている。
 単に絵はがきのような絵を撮り、主要な女優を中国人俳優に演じさせ、
これぞジャパネスクみたいな昔ほどひどくないが多少の中国なのか
日本なのかわからないところのある勘違い映画という巷の批難を
度外視しても、ハリウッド制作であり、過酷な運命の中で愛を
貫き通したという文芸大作にしてもらいたかった。
 なんせこの「シカゴ」のロブ・マーシャル監督は、アップが多すぎる。
あれだけのオープンセットを組んでいて、主人公の大事な場面で
寄りばかりで単調になっている。娼妓でなく芸妓として売れっ子になる
のに発表の舞台で踊った踊りが軽業師のような扇子回しと雪女の舞い
だというのが説得力にかける。
 芸者というのは、容姿、芸事、に加えて才気がなければならない。
どこにあっただろう。
 とにかく見終わった後「パピヨン」の島からかろうじて逃げ帰った
スティーブ・マックイーンにチャン・ツィーが見えてしまってはまずいのではないか。
 日本人俳優がハリウッド映画に出たなんて自慢している輩がおかしい。
黒澤さんはきっとこれならやらなかった方がいいじやないのと、言うかもしれない。
これだったら「五番町夕霧楼」を観てくれと言いたい。
 最後に中国人女優もよかったが、子供時代のさゆり(千代)を演じた
大後寿々花ちやんはとてもよかった。監督もラストカットに使っていたくらい有望だ。
まるで「千と千尋の神隠し」の千のように走っていた。唯一の収穫だった。
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by stgenya | 2006-03-30 06:25 | 映画・ドラマ
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