かもめ食堂


ruokala lokki 
 家具雑誌などとタイアップして単館から拡大ヒットしているらしい。
ぴあFFに入選後「バーバー吉野」でデューした荻上直子監督の新作。
オールフィンランドロケのスタイリッシュな映画で女版森田芳光を思わせる。
 ただ初期の森田ほどクセはない。
三大話みたいだが、かもめ(チェーホフ→三姉妹)、食堂(グルメ)、フィンランド
とこの映画のタイトルを観ただけで、受け入れやすいという企画の勝利だ
と思う。
 「バーバー吉野」のときもそうだったが非常に主人公にある距離感をもって
最後まで寄り添って描いていくという手法でその間に緩みや無駄がない。
この若い女監督は、しっかりとした対象を見つめる目をもっている。
霞澤花子企画となっているが群ようこのこの原作をこのようにスマートに
見せる力をもっているということは、なんでもないようだけどすごいことだと思う。
三十女、四十女、五十女、独身が三人。日本からフィンランドに来て日本料理
の食堂を出す。はじめ全く客が来なかったのが最後には、とりあえず繁盛する。
 殺人事件も韓流のような大悲恋があるわけでもなく、主人公のサチエの何か
特技が披露されるわけでもなく、何も起こらない。烈しい感動や劇的なカタルシス
もない。(でも最後にサチエがおにぎりの父の思い出を語るとこで母娘ずれの
観客が泣いていた。)ただただ楽しく、映画が終わった後に
焼き鮭か豚のしょうが焼きが食べたくなる。
 いい映画の条件の一つには、その映画が終わってもその糸を引いて、その中身
に無意識に影響されしまうということがある。
 高倉健やブルース・リーの映画を観終わって出てきた観客が肩をイカらせて
歩いたり、「アラビアのローレンス」見た後無償にのどが渇いたりする。
「かもめ食堂」もそんな効果があるということは、大なり小なり演出家の力量だ。
 この劇的なるものを排した手法は、小津的でもあるが荻上監督の色のような
ものも出ていて面白い。「かもめ食堂」の基本がカットバックにあり、ナレーション
と挿入のアラスカや森という会話からきのこ狩りのカットというように繋げていく。
 これはとても難しく単純なモンタージュに陥る場合もあるし、食堂にお客が増えて
おにぎりを注文するようになるためのもう少しメリハリがあってもよかったと
思うがこの手法だとここの計算が微妙で難しい。一歩間違うと淡々としたつまらない
映画になってしまう。荻上がここを辛うじてクリアしたのは、人間を観る目が
ぶれなかったからだと思う。
 生きていることへの等間隔。人間誰しも北欧までひとり旅をするのだから
何かしら日本での人生がある。この映画でもそれはそれとなく描いている。
でもそれは、控えめでラストカットの「いらしゃいませ」で三人がこころを
ひとつにするいいシーンがあるが、この映画は他人を等間隔で認めるという
ことをテーマにした気持ちのいい映画である。
 
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by stgenya | 2006-05-02 15:17 | 映画・ドラマ
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