花よりもなお

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 是枝裕和脚本監督の松竹配給作品。
製作は、テレビマンユニオン、エンジンフィルム他。
 公開前から監督自らPART2をやりたいと吹聴して
いた。立川談志が面白いともらしていたにもかかわらず
三週目以降それほど伸びなかった。
 「幻の光」('95)から「誰も知らない」までのドキュメント
風の作品群から松竹時代劇とはミスマッチのように見え
たが見てみるとある意味「なるほど」と思える。
戦前からある時代劇に仕立てた長屋人情喜劇である。
 ジンタのような景気のいい音楽に始まってボロ長屋の
人々をセンスのいいカメラで活写していく。
是枝の映像眼は、こどもの描写や衣装の汚れの拘りや
長屋の営みなどのリアルな描写に表れている。
なるほどである。今までの映画とつながっている。
 岡田をはじめ古田、加瀬と俳優たちも恍けてまあまあ
である。話も仇討ちをテーマに親の仇を探す信州の若侍
とその幕府の報奨金目当ての長屋のその日暮らしの町人
、そして本物の赤穂浪士の潜伏した仮の姿の住人。
発想が面白いし、9.11を思い巡らして今日的である。
 剣に長けていない若侍(岡田准一)が未亡人の宮沢りえ
にこころを寄せていく中で仇の人足(浅野忠信)の現在の
妻と子供のいてまじめに働いている姿を見ていくうえで
仇討ちを諦め、代わりに長屋総出でうその仇討ちをして
金をもらい店賃も払えない貧乏長屋の住人たちを助ける。
仇討ちによる恨みでは、何も解決しない。どう人を許し
受けとめるか、と監督はいいたいようである。
人物描写も乗ってていいし、これが成功していたら一級品
の喜劇になっていただろう。
 心地よいのに中だるみがして見終わったあとに残らない。
これは、ひとつに岡田と宮沢りえのシークエンスが明確で
ないことと、岡田と浅野の仇同士の葛藤が甘いからでしか
ない。一番重要な話の柱できちんと描いていないからだ。
あんなボロ長屋に鶴のように宮沢母子がどうしているのだ
ろうか、又探しあぐねていた仇をどうして見つけていたのか
端折っているところから関係がうすい。
雰囲気と気分でたのしく長屋人間模様を描くだけでは、
映画にならない。「どん底」や「人情紙風船」とまでは言わ
ないが、江戸時代現実の長屋の暮らしはこうだったのか
と思うぐらいリアルに描いているのに、人の心の揺れを
リアルに描いていないと単なるおとぎ話になる。
ちょっとこころを潤すおとぎ話を目指したとしたら、エンター
テイメントを甘くみているということになる。
是非脚本をもっと練ってからこの企画をしたらよかったのに
と是枝作品を初期のテレビドキュメントからだいたい観てる
者として残念に思う。
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by stgenya | 2006-08-11 11:53 | 映画・ドラマ
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