父親たちの星条旗

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'FLAGS OF OUR FATHERS'「父親たちの星条旗」
  クリント・イーストウッドの監督作。製作スピルバーグのDreamWorks。
脚本には「クラッシュ」のポール・ハギス、ウィリアム・ブロイレスjr。
原作は実際の主要人物の衛生兵゜ドク゛の息子が父の死後書いたもの。
長男のジェイムス・ブラッドリーと著述家ロン・パワーズ。
 監督になって一番安定した作品になっている。
ハギスが途中から脚本に絡んでいるから時間軸を3つに区分して
全体の構成をつくっている。
  ファーストシーンの衛生兵だった父親ブラッドリーが倒れて死ぬ
までの現在と回想の実際の硫黄島の戦闘場面、そして終戦間際
写真のモデルとして米各地を凱旋広報していく時代。
 この映画が強く観る者のこころにしみ込んでくるいい作品になって
いるのは、監督のつよいペスミスティックな怒りが貫かれているからだ。
  あのビューリッツアー賞をとったローゼンタールの硫黄島に旗を立
てる写真にまつわる真実の物語。本当に最初に旗を掲げた英雄は
自分たちではなかった。その前に旗を立てた兵士がいた。しかし
二度目に撮った写真が残り評判になった。そしてその事実は政治的
に隠されヒーローとして戦争の軍資金の国債を国民に買ってもらう
政策の広告塔になった。そして原爆投下を早め戦争を終わらせた。
  「本当のヒーローは、自分たちではなく硫黄島で死んでいった戦友
たちだ」とブラッドたちは言うがそれは彼らの賛辞になるだけだった。
 イーストウッドは、最初のナレーションて゜「戦には勝った者も負けた
者もなく、ただ悲壮感があるだけだ。それは実際にそれを味わった
者しかわからない」という。
 ここでいままでの「許されざる者」や「ミスティック・リバー」のどうして
こんなに突き詰めて悲しさを描くのだろうという疑問が少しわかった
ように思う。戦争は、ボクシングより明確に人を殺すという行為に近い
仕事である。戦場で敵を前に銃を撃てる確率が実に20%だといわれ
ている。これを訓練で高めたベトナム戦の帰還兵で戦後精神障害が
増えたという。人が人を殺める行為の現場は単に陰鬱な風景でしか
ない。少なくとも普通の人間にとっては。
イーストウッドはそのことをよく知っているのだと思う。
  又ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ、
バリー・ペッパーポール・ウォーカー、ジェイミー・ベルといった若い
俳優たちがすばらしい。余計な演技がなく素直に演じている。
その無名に近い主人公を演じる俳優たちのワンテークの演技
が心にひびく。イーストウッドは準備をしたらテークを余り重ねない
ので有名だが、こういうことができる人を映画監督というのだ。
 そしてエンドタイトルでそれぞれの人たちの実際の当時の写真が
出てきて涙が止まらなくなった。
 あまりに実際のひとたちと俳優が似ているのだ。
それだけイーストウッドがこの映画のために自分で徹底して取材と
インタビューをしたということの証だ。
  つぎの「硫黄島からの手紙」がたのしみだ。
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by stgenya | 2006-11-05 12:29 | 映画・ドラマ
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