結婚のすべて(シリーズ処女作の頃)

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「結婚のすべて」昭和33年5月26日公開。
  岡本喜八が平成17年2月19日結婚記念日に食道がんで
亡くなった。81才だった。最近NHKで闘病生活のドキュメンタリー
が放送され最後までプロデューサーみね子さんと夫婦で映画製作
に情熱を燃やしていたことが伺えて興味深かった。
 大正13年鳥取県に生まれ、明治大学に入学、静岡で軍隊生活
を経て東宝に入社して成瀬、谷口、マキノ雅弘などの助監督を務めて
34才で監督デビュー。その記念すべき第一作が「結婚のすべて」。
 脚本が白坂依志夫。主演雪村いづみ(こちらもデビュー作)、共演
上原謙、新珠三千代、山田真二他。
 まずテンポがよく洒落たセリフにポップな青春コメディーになって
いて、見終わって爽快な気分になる。
いい映画というのは、エンドマークが出て館内の照明が明るくなる
ときにああ、もっとこの世界にいたい、という気分にさせてくれるもの。
処女作にして、今見てもそう思う。
 時代的に見て戦後13年。高度経済へ向っていた頃。結婚相談所
や花嫁学校など流行り、学生は自由恋愛を叫ぶそういった世相を
当時売り出し中の脚本家白坂依志夫がスノッブで粋なセリフと巧
みな構成で日本と時代を切り取っている。
 物語は、新劇の研究生の雪村いづみの兄の結婚式からはじまり
新珠三千代の古風な姉夫婦と雪村のモデルとしての雇い主の
雑誌編集長三橋達也の契約結婚(相手が花嫁学校長の塩沢とき)
とを見せながら、学生でバーで働く山田真二に思いを寄せ、兄や
姉のような古い見合い結婚は絶対にしたくない、結婚の子孫繁栄
や家督のためじゃなく情熱の結晶として恋愛結婚をしたいと山田
に夢中になるが、この学生も食わせ物で別に同棲している女が
いた。また大学教授夫人の姉が編集者の三橋に見初められて
理想の主婦像ホーム・バディとして雑誌に載せたいと迫られ、
断っていたのだが、上原演じる大学教授の収入で家計が足らず
雑誌モデルを引き受けるが、夜ジャズクラブで三橋の下心に
気づいて逃げて、家庭に戻る。何もかもを許してくれる夫にあらた
めて心のチャイムを鳴らされ抱き合う。それを見てしまった雪村は
父の推薦する見合い相手の仲代達矢と恋愛の対等な存在として
つき合い始める。
 愛と結婚。男女付き合い。理想と現実。ここで提示された問題は
今でも変わってないし、フェミニズムと社会生活としての結婚子育
てはそのまま今も大きな課題としてある。
 この処女作で岡本は新人にして無駄のない構図とカッティングを
披露している。特にトラックバック・アップの多様。場面転換に同じ動き
を重ねたり、歩く足に次の画面のラジオの音楽のリズムを先行して
乗せたり、軽快なコメディーによくマッチしている。
俳優も喜八オールスターがこの処女作ですでに総出演であるのに
驚いた。新劇のレッスンでキザな演出家で三船敏郎がワンシーン。
ジャズクラブの怪しい喧噪の中殴り合いでしか愛を交わせない
男女役に佐藤允がワンカット、そのクラブでロカベリーを歌っている
のがミッキー・カーチス。そして最後の見合い相手に仲代達矢が
飾っているのに、その後の喜八作品を占う思いがした。
 反逆とジャズと群衆劇。
愛と裏切り。挑戦と失敗と諦めないさま。集団の中の孤立。
そして孤立無縁の戦い。岡本喜八が映画製作に資金がなく、
ことある毎に自宅を抵当に入れて、日本人が生き抜く有り様を夫婦で
何とか映画に写し取ろうとまさしく孤立無縁の戦いをしていたのは、
第一作「結婚のすべて」のラストシーンでこれから結婚するかもしれ
ない若い男女が自分の理想や望みをお互い噛み合ないまま、
強情をはって、でもそんなとこが好きと云いながら丸の内ビル街
の交差点を車の群れを縫って歩き出すふたりの姿に最後まで
同志だった岡本夫婦がダブって見えてくる。
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by stgenya | 2007-05-23 05:28 | 映画・ドラマ
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