明日への遺言

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「明日への遺言」脚本小泉堯史、ロジャー・バルバース。
 原作大岡昇平、監督小泉堯史、制作エース・プロダクション。
 出演:藤田まこと、ロバート・レッサー、フレッド・マックィーン。
 富司純子、蒼井優、田中好子、西村雅彦など。
 これは、戦後開かれたBC級裁判で裁かれた岡田資中将のいかに
裁判を闘ったかを丹念に追った映画である。
ほとんどが法廷シーンで貫かれている。地味だが考えさせられる
映画だった。
なぜか。ゲルニカから始まるこの映画は、実はアメリカの戦争その
ものを問うているからである。非軍事施設への無差別爆撃は、
正統な戦争行為なのか。太平洋戦争前のアメリカ自身は、その
犯罪性にむしろ抗議をしていた側だった。それが東京大空襲から
広島・長崎の原爆まで話がすすむ。爆撃機のパイロットがパラシ
ュートで名古屋で落ちて、東海地区司令官だった岡田は、略式裁
判でその捕虜の斬首を許す。
この捕虜に対する残虐性が戦争犯罪人として裁かれる。
過去に「飼育」や「私は貝になりたい」などこの辺を扱った映画が
あったが、この「明日への遺言」は、小泉さんらしく静かだが、
ブレずに、見終わってよくよく考えると激しい義憤を観客に落と
している。今アメリカが強者としてベトナム、アフガン、イラク
と戦争をくり返している現実が当然視野に入っている。
戦争だからといって非戦闘員を無差別に殺していいのか。
戦にもルールがあるハズだ。でも実際はそうはなってない。
NYのツインタワーのテロ以来そのことが裏返しになってアメリカ
に返って来ている。卑劣が卑劣を産む。
 映画は、そこをバックボーンにしつつ藤田まこと演じる司令官
の部下や家族に対する潔さや庇護の取り方をメインに謳う。
この岡田中将が藤田さんだからよかった。人間味がうまく引き出せ
ている。こういうシビアーな話は、フランキー堺もそうだったが
喜劇人の方が成功しやすい。
撮影は、マルチカムで寄りの望遠レンズが裁判の進行とともに望遠
側が増していって人物の表情がよく強調されるよう工夫していた。
このシナリオは、監督の修行時代にすでに書かれたものらしいが
最後に欲を言えば、「ふるさと」を歌うシーンを生かして、部下
19名のそれぞれの人間としての葛藤や岡田自体の宗教だけで
収まらない孫の成長を見れない苦悶と恐怖などのもっと人間的な
葛藤がかいま見られたよかったと思った。
まあ、会社や公務員の不始末が目立つ中で上司が自ら責任をとる
という本来尊いとされたスピリットを忘れていたことを思い起こ
させてくれる映画だった。
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by stgenya | 2008-03-04 03:38 | 映画・ドラマ
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