ノーカントリー

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「ノーカントリー」NO COUNTRY FOR OLD MEN
脚本・監督ジョエル、イーサン・コーエン兄弟。
原作コーマック・マッカーシー「血と暴力の国」。
出演トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ
・ブローリン、ウッディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド。
今年のアカデミー作品賞受賞作。海外の映画祭でも評判がいい。
 観る前からラストが賛否両論とか言っていたのでどうだろう
と思って観てみた。コーエンは非常に玄人受け路線を歩いている
から少しの心配があったが、2時間2分。しっかり観られた。
 ドキュメントのように淡々としているが丁寧に練られてつく
っていて、画角や構図が無駄がなく最後まで楽しんで観ること
ができた。よかった。
はじめに西部の砂漠が映し出され、保安官に親代々からなった
が昔の爺さんたちは、銃をもってなかったという。 
一人のガスボンベをもった男を捕まえた保安官補佐のシーンへ
つながり、その男が隙を見て保安官補佐を殺す。
それがアントン・シガー(ハビエル・バルデム)という殺し屋。
まずフカンで撮ったその殺しの場面のおかっぱ男シガーの形相
が凄まじい。ここからこの映画の性格が決まった。不気味なり。
そして鹿撃ちをしていた溶接工ルウェリン・モス(ジョシュ・
ブローリン)が砂漠で数人が惨殺されているのに出会う。
そして金の入った鞄を拾う。これでこの髭の男モスは、逃げる
ことになる。この地域の保安官エド(トミー・リー・ジョーンズ)
がこのメキシコ麻薬に絡んだ惨殺事件と姿を消したモスを追って
いく。そこに金を取り戻すために組織からシガーがガスボンベ
を抱えてやってくる。
 ここで逃げる、追うの三者の追跡劇になる。
コーエンをはじめにしてアメリカ若手の映画術の新しい手法は、
初めの殺人事件から次々と起こる殺人事件の中身に寄り添わずに
行き当たりばったりの事件をカードゲームのようにスペイドが
出たら、今度はハートという風にそれで数の多い方が勝って
次へ進んでいく風にそのアイデアとスリルを映画にしている。
だからここで殺された売人やホテルマンなどの人生はどうでも
いい。むしろパズルのように三者がぶつかり、組み合わさり、
ひとつの現在の死の恐怖と隣り合わせの社会を浮き彫りにして
いく。この虚無感は、戦争をしている国。善意で自らが傷を負い
かけた善意の向側から無視される国に育ち、結局悪はなくなら
ない。というアメリカならではの空気感から来ている。
老人に住む国はないどころか、愛や夢の人間世界を歌ってきた
ハリウッド映画が今40年ぶりにカウンター・カルチャーを
受けている。ニューシネマが出てきたように不毛と乾いて滑稽
な死で終わる映画がでてきたのだ。
うまく金を手に入れたモスは、今までのジャームッシュたち
だったら、手違い間違いでうまく逃れてエンドマークだったが
コーエンは、モスもその若い妻も死に神のようなシガーの手に
ゆだねてしまうラストにした。
言ってみれば、21世紀の「イージー・ライダー」と思えば難解
じやない。ベトナムではなく911とアフガン・イラク戦争がこ
の背景にある。悲惨なお返しのない血を大量に流した国民は、
死の現実をどう受け入れるかに関心が向かうようだ。
この映画見て、ラストが気に入らないと言っている
評論家たちは、どうしたいというのだろうか。
この題材でハッピーエンドもないし、むしろ保安官のトミーの
死んだ父の夢を見たという挿話で終わっている今のスタイルは
示唆的で深い後味を残していると思う。
馬で父が松明をもって追い越して行ってしまった。
俺は、その先で父が荒野で焚き火をして待っているのを知って
いる。
こんな世の中、そのうちに親父のところへ行くよ。少しは愛や
夢を語れた親父たちの囲む焚き火の元へ。とでも言いたいのか。
渋い演劇的なセリフだ。
それとこの映画で得意なのは、シガー役のハビエルだ。あの風貌
と冷徹な殺し屋の演出は、近年にないモンスターぶりだ。
まるで死に神に近い不死身さでまるで死なないエイリアンみた
いだ。しかもガスボンベのエアガンが武器なんだから、恐怖が
倍加する。これは、コーエンは、誰でもいずれ来る死に神として
描いたのではないだろうか。
アメリカとメキシコ。生と死。愛と恐怖。貧困と裕福。そして
コインの表と裏。これらの境は、どこにあるのだろう。
まずこの逃れられない境を自覚してはじめて愛と夢がこの境界
を埋める時代がくるような気がして映画館を出た。
このコーエン兄弟の新作が成り立ったのには、シャープな映像
と存在感のある俳優たちがいたからこそと強調しておきたい。
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by stgenya | 2008-03-15 22:02 | 映画・ドラマ
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