ハッピーフライト

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「ハッピーフライト」脚本矢口史靖、矢口純子、監督矢口史靖。
製作フジテレビ、アルタミラピクチャーズ、電通、東宝。
 長編商業映画を矢口監督が4年ぶりに撮る。
この若さだと少し開きすぎではないかと思う。オムニバスは別として。
製作プロダクションも「ウォーター・ボーイズ」からのファンも待ちに待
った新作映画だった。航空業界を正面から扱い、どうやって旅客機が
空を飛ぶのかと丁寧に見せてくれる。
 二年間の綿密なシナリオハンティングの結果だという。
確かに専門的な知識や地上勤務のスタッフの分業の仕組みや管制塔
の仕事、鳥撃ち、整備士などの仕事内容が見たことがないほどリアル
に描かれて、まるでANAの社内教育ビデオを見る感さえある。
 ただ前二作でもストーリー性が希薄だったがもっとさらに娯楽となる
乗組員か乗客の物語がない。
これを意識的にしたとしてもその代わりに芸術的かといえばそうでも
ない。もったいない。
これだけ調べられた企画ならばここにそれぞれのキャラクターのドラ
マがうまく絡み合って雨の羽田へのソフトランディングできたハズで
ある。本年度の最高に面白いエンターテイメント作品になっていただろう。
見習いパイロットとCAの恋愛なんて陳腐なことは言わないがもっと
いろいろ組めたのにと思う。お忍びの客が乗っていたとか、ハワイへ
行く新婚カップルだってワケありだったとか、整備士の技術屋精神とか
いろいろやりようはあったと思うが、矢口君は奥さんと書いたシナリオ
は徹底して飛行機をどう飛ばし、どう乗客を安全に運ぶかということ
に力点を置いていた。
だから前半が少し弛んで後半飛行機が帰って来るところで緊張感
が出てくるが観終わって、なんとなくすっきりしない。
無理に話をつくらなくてもいいけど、脚本は糸から縄になる仕事である。
そこにヘソがしっかりあればどんなに遊んでも脱線しても面白くなる。
同じ製作会社の先輩監督の周防君はそのへんがとてもうまい。
あんなに裁判の専門的な話でも「自分は無罪だ」というヘソがあった。
物語が上手に組まれていれば後は現場の力でテイクオフできる。
そしてその飛行機に又乗ってみたいと思い、あの登場人物たちに
会いたいと思う。その流れは変えようがなく眺めのいい川になって
いるハズである。
たぶん調べていって、普通の物語にしたくないが新しい自分の物語
のヘソがぼんやりとしたまま入ってしまった感じがする。
 それが聞くところによると、編集でシーンの入れ替えを何度もやって
仕上げでシナリオを書き直す面白い経験をしたという。
しかしヘソのしっかりしたシナリオならそう簡単に編集でいじれない
ものである。
若手の中ではいい映像センスをもっているのだから、もっと多作して
観客を唸らせる傑作をつくってほしい。それができる人だと思う。
本当にもったいない。
「ハッピーフライト」ってどんな映画って聞かれて一口にどういうか。
予告編をみてもどんな映画かわかりにくい。
矢口流の脱線の面白さが羽田空港のどこかあったように思う。
「W・B」だとシーワールドにバイトへ。「S・G」だと山に猪狩りに。
そんな脱線の余裕がなかったか、新しい矢口へ脱皮中だったか。
映画の日の渋谷シネタワーの昼で70人の観客(二週目が終ったと
ころ)だった。周防、伊丹へ近づいてほしい。
なんでもない普通の日の渋谷シネタワーの昼間で「マルサの女」は
溢れるばかりの観客だった。テレビの局宣伝でもなくね。
矢口史靖の才能は、これからだ。ぜひ昼興行をいっぱいにする
次回作をお願いしたい。
あなたなら、出来る。
 
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by stgenya | 2008-12-02 15:58 | 映画・ドラマ
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