チェ・ゲバラ28歳の革命

d0068430_1112225.jpg

「チェ・ゲバラ/28歳の革命」配給日活他。
 監督スティーブン・ソダーバーグ、脚本ピーター・バックマン。
出演ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、ジュリア・オーモンド。
 キューバ革命をカストロと一緒に成した革命家ゲバラの伝記
映画の二部作の第一部。
渋谷の映画館は、超満員。不況になると映画館に足を運ぶ
というのもあながち伝説でもないみたい。
さて、デル・トロが製作に名を連ね、「トラフィック」のS・ソダー
バーグと組んで念願の企画として世界配給までこぎつけた
渾身の映画と言う。
ゲバラに対するインタビューと国連での演説などのニュース
場面の再現フィルムをインサート構成にしてジャングル戦から
サンタ・クララの市街戦までを従軍記録のように描いて行く。
 特に記録ニュース映画風のところは、スーパー16ミリで
わざわざ撮って荒い画面にしている。
まずデル・トロの入れ込みようはよくわかる。実際のチェ・
ゲバラはもっと痩せていて二枚目だがデル・トロの腹はどう
みても出っ張り過ぎ。かつて日本でも学生運動のはげしい
頃は、若者のTシャツやペナントにゲバラの顔写真をアイドル
のようにプリントして身に着けていた。
それくらい格好よかった。デルちゃんもっと絞ってもよかった
と思う。
 ストーリーは農民を組織しながらジャングルでの野戦を
繰り返して、革命軍として自覚に欠ける者の粛清などを
経て、市街戦で勝利をしてハバナから独裁者を追い出して
革命をフィデル・カストロと一緒に成立させるまでを客観的
な描写で写し取っていく。
だから極力アップが少ない。しかも大事な指令を野営地で
出しているグループ・ショットでフィデルかゲバラかわから
ないカットがいくつかある。
つまり軍服のゲバラが後ろ向きでしゃべっていて、五六人
のフルシッョトでは一瞬迷う。監督は意識的にこれは実際
のゲバラの革命の道を従軍しているような感覚で観客を
運ぼうとしているのだと思うが、ポイントが反面ボケた感
もあった。たがら肝心のアルゼンチン人のゲバラがどう
してキューバ革命にのめり込んだか、医者でもあった彼
がどうゲリラ戦の策に長けていたか、又無知な農民や戦士
に読み書きを提供して人々の心をいかに掌握していったか
が期待ほどに感じ取れなかった。
 理想に燃えた革命戦士は、人間としてどう戦争という中
を潜り抜けて変質していったのか。
 近年観た映画の中でベストワンに数えたいぐらい
好きだった「モーターサイクル・ダイアリー」のゲバラの
青春を観ているわたしとしては、デル・トロの貧民や志願
兵士に対するゲバラ像がもうひとつ明確でなかった。
もしかしたら空回りしてたか、自分が好きだった分見えな
かったか。決して悪くはないがもっとナマのチェは、どんな
だったか、見たかった。
ひとつにはソダーバーグの手法が内面描写を外した分
デル・トロとして演技ブランをどうするか難しかったの
かも知れない。
 「アラビアのロレンス」や「地獄の黙示録」で表された
独りで剣をもって踊るロレンスや牛を切り倒すのを見る
カーツ大佐など美しい内面描写が心に残るが・・・
あえて徹底して客観でいくとなったらどうするのか示して
ほしかった。革命の勝利に向けて人民へ「祖国か、死か」
と突撃してラストまでまだまだ二部があるよって感じで
感情は落さないようにこの映画では終る。
チェについてお勉強は出来た。
で、それだけで一部を終っていいのか・・・
裏切り者や私欲に走る者を処刑する冷徹さと傷ついた
者を手当てする医者としての優しさ。そしてその後ソ連と
とも距離をとって南米の革命に燃えた理想主義者の
柔らかい部分ももっと身近な人間として見たかった。
キューバ革命の直ぐ後、S34年日本に来て予定を変更
して夜行列車で広島訪問をして原爆記念館を見て
「なぜ日本人はアメリカを非難しないのか」と熱弁を
ふるった繊細さをあの革命戦争の中で一箇所でいい
からシナリオ化していたら、デル・トロもやりやすかっ
たという気がする。
熱は伝わって来る。今アメリカの時代が終ろうとしてい
るとき、チェ・ゲバラは単なる懐かしさだけでは終らない
ヒントをもっている映画の企画だ。
こうして20世紀とはなんだったのか、指導者とは何か
ということについて考えるいい企画ではある。
是非「モーターサイクル・ダイアリー」を見てから観て
ほしい。しっかりつくっているからこそ辛口になるが
いい映画であることには基本的に変わりがない。
[PR]
by stgenya | 2009-02-02 13:43 | 映画・ドラマ
<< チェ・ゲバラ/39歳の別れの手紙 懺悔 >>