イントウ・ザ・ワイルド

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「イントウ・ザ・ワイルド」監督ショーン・ペン、パラモン
トE製作 出演エミール・ハーシュ、ハル・ホルブック、ウ
ィリアム・ハート原作ジョン・カラカウアーの同名ノンフィ
クションの映画化。
 これは、青春の彷徨と人間探求の爽やかなロードムービー
である。
いつの時代にも青年は大人の世界へ入る時大いに悩み苦しみ
から逃れるために旅に出る。
青春映画の一パターンとして大人や社会への反発から旅をす
るロードムービーが何年かおきにつくられる。
その中でこの映画は、なかなかよくできた映画になっていた。
 かつて「イージー・ライダー」や「ウッディー・ガスリー
わが心の旅」などのすぐれた映画があったがこれらにつづく
ものだと言える。
 話は、大学を卒業したばかりのクリスが就職もせず、一人
ドロップアウトして無賃旅行の放浪に出るところから始まって
ウェインという農場主に世話になったり、ヒッピーの年取った
カップルと砂漠で過ごしたり、元軍人の老人に息子のように
親密な仲になって、アラスカの雪の残る荒野へ一人旅を敢行
する。この人々がみんなそれぞれ悩みを抱えていて、素人の
スーパートランプと名前を変えた主人公にシンパシーを寄せつ
つ思春期から大人へ脱皮しようとする姿に影響をあたえる。
 クリスは喧嘩の絶えなかった両親との桎梏から抜け出したく
て、長くココロのどこかに空白があったのを大自然の中で自力
で生きることでその純粋な充足でもって埋めたかった。
自分は、この野生に自分を置かないとこれから先生きていけな
いと思った。その手がかりは、トルストイやソーロー、ジャッ
ク・ロンドンだった。
 彼がアラスカで川向こうに見つけた不思議な捨てられたバス
で猟をしながら生活して、手記を書き、毎日自分の歩んできた
過去をひとつひとつ思い返しながら生きる力を取り戻していく。
ショーン・ペンは、このa magic busの生活をシナ
リオの中心に置きながらなぜ彼が旅に出たかというシークェン
スを回想形式でつないで随所にアメリカン・ニューシネマ風な
方法で音楽をクリップ、クリップにかぶして場面と場面をつ
なげていた。
ニ分割やスローモーションなどを使ってミュージックビデオ
スタイルを取り入れて、即興演出して自由に編集していた。
これがまた青年が自由を取り戻す旅の映画にぴったりしていた。
ラストを言ってしまっていいのか、わからないがあの悲劇的な
ラストもちょっとした手違いといったことだったので「モータ
ーサイクル・ダイヤリー」や「卒業」のような胸を撫で下ろす
結末にはならないが、彼が生きる準備ができた矢先だったから
観ている方としては、ココロに爽やかさが残る。
 なんといっても最終章人間らしさで出てくる昔沖縄に駐留
している間に妻子供を事故で失った元軍人の老人との心
の交流がこのドラマの核を示していてココロに残った。
実の父との間に違和感を感じて苦しんでいたクリスが他人の
老人と親子の情をもったことで彼は、救われたし、この放浪
の旅が大きな意味をもったことで又彼は人間の社会へ戻る
手筈が整った。この岩山での描写は、ペン監督秀逸のシーン
だった。
 ひとつだけ欲をいえば両親の描き方が説明的だけに留まっ
たのが惜しかった。もっと何かできた気がする。
僕は、この映画を観ていて古いが斉藤耕一の「旅の重さ」と
いう高橋洋子主演の映画を思い出して、切なくて伸びやかで
爽やかな気持ちを思い返していた。
ココロ洗われる清々しいショーン・ペン監督作品であった。
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by stgenya | 2009-04-17 10:51 | 映画・ドラマ
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