スラムドッグ・ミリオネア

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「スラムドッグ・ミリオネア」製作Pathe film他。監督ダニー・
ボイル、脚本サイモン・ボーフォイ、出演デヴ・パテル、フリ
ーダ・ピント他。
  今年のアカデミー賞8部門受賞作。インド舞台のイギリ
ス映画。
とても躍動感があり、切なさがあり、シナリオ構成がしっ
かりして久々の映画らしい映画を観て、泣けた。
「トレインスポッティング」の監督らしくスラム街になる
と画面が斜めになり、疾走して貧乏の底で生きることの現
実を見事に切り取ってバラックの家や路地の匂いや熱気を
表現していた。
特に子供時代の兄弟のエビソードは、現実が恐ろしいだけ
心に深く入り込んで涙が止まらなかった。
今の日本の若い人は、これをフィクションとして見るかも
しれないが多少貧乏を知っているとドキドキする。
 全体の構成が良くできていてクイズ番組で賞金を獲得し
て、それもスラム街出身の無学の若者がミリオンダラーの
頂点にいくのでおかしいと思った警察に捕まり拷問を受け
て、クイズの一つ一つがどうして答えられたか尋問する形
でそのクイズの問題の答えと少年の生い立ちがそれぞれダ
ブって、物語の骨格を骨太に練り上げている。幼い兄弟が
貧民窟で育ち、宗教戦争で母を殺され、子供の虐待村へ囲
い込まれ一人のラティカという少女と出会う。
体にキズを付けられる危機一髪から列車で兄弟サリームと
ジャマールは逃れる。そのとき逃げ遅れたラティカは、の
ちに娼婦となってジャマールと再会する。
そして悪の組織に入った兄や初恋のラティカと離ればなれ
になりクイズ「ミリオネア」に出演して、もう一度別れた
ラティカや兄に会うというストーリー。
この回想形式をクイズの答えとリンクしたところが新しか
った。その中でも列車で潜りで物売りをして稼ぐ兄弟が車
掌に見つかって振り落とされて、土煙の中立ち上がると成
長して十代になっているという描き方は、最も映画的だっ
た。
 階級社会や貧困の悲惨さを初恋を貫く主人公ジャマール
の一途さと幸運なクイズで億万長者になるという発想をス
ピーディーにそして情緒豊かにまとめて、監督のダニー・
ボイルは素晴らしい。
インドを舞台にして、テレビクイズ番組をモチーフに愛と
友情と社会の矛盾を巧みに描いて誰が観ても、どこの国で
観てもワクワク・ドキドキして、そして切なくなって最後
はハッピーエンドに終わらせる手腕に感心した。
この内容の激しさは、イギリスでもアメリカでも日本でも
もはや出来ない素材になってしまって、インドだから成り
立った。とても映画的な映画だった。
ひとつシナリオ的に注文をつけると、大ラスで「三銃士」の
三人目の名前を言えという問題にテレホンのライフラインで
ラティカにつながってわからずジャマールが一人で答える。
ここに三銃士の三番目の名前を誰かがつけたとすると
面白くなったんじやないかと思った。
たとえばラティカの流した子供の名前とか、兄弟の顔を知
らない父の名前だとか・・・
まあ、あざといか?このクライマックスがうまく落ちると格好
いいシナリオになると思った。蛇足かもしれないが・・・
そしてエンディング。人物紹介風にクレジットと役の各年代
の写真がでてくるがジャマールとサリームの幼い兄弟のク
リクリした大きな眼が印象的で心に響いた。
お金とは何か、運命とは何か。
切実に考えさせられる映画だった。


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by stgenya | 2009-04-23 19:23 | 映画・ドラマ
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