カテゴリ:映画・ドラマ( 161 )

スーパー8

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「スーパー8」(2011年製作アンブリン)
 脚本・監督J.J.エイブラムス、製作スティーブン・スピルバーグ
 出演エル・ファニング、カイル・チャンドラー他
  久しぶりに映画評を書きます。
 今年になって観ていないわけではなくて、「ノルウェーの森」や周防君の
 愉快なドキュメント「ダンシング・チャップリン」も観てきたし、この二つ
 は結構楽しめた。ただちょいと忙しくて書かなかったら、機を逸してしま
 った。
  さてエイブラムスの「スーパー8」。宣伝はすぐにスピルバーグの新作
 みたいにいうが別ものだし、あの名作「ET」や「未知との遭遇」を思い
 出して最高傑作と名打つ。でもやっぱり騙されるね。
 スピルバーグへのオマージュではあるが、新作として完成度が高いとは言えない。
 確かにJJエイブラムスの映画おたくの少年たちの物語としては、うまく
 つくっている。ほのかな初恋とその少年と少女の事故で亡くなった少年の母
 をめぐる家の対立などをうまくシナリオに絡めて話をつくっていた。
 たまたま8mmフィルムで撮影していたところへ列車の事故。
 ここからストーリーはぐんぐん動き出して、空軍がその事故車両にある
 ものを隠しているうちにその正体不明の生物が町を破壊していく。
 ここはパニック映画。逃げる逃げる。そしてカイル少年の父が保安官と
 いう設定が生きて、そのなぞの生物と軍との関係を究明していく。
 この辺が「ET」。最後のその宇宙人が宇宙船で飛んでいくラストが
 「未知との遭遇」。その宇宙生物が「エイリアン」。
 ここまで書いてみて、これってパロディ映画?
 いやあ。そう思ってしまう。
 せっかく少年と少女の映画つくりのいい話をそのまま膨らまして行った
 方がよかったと思う。エル・ファニングは取り立ててうまいのに・・・
 今アメリカ映画で宇宙人が出てくるとみんなエイリアンになってしまう。
 タコとマントヒヒとウツボを足したみたいな形。これ、又かと思っちゃう。
 オリジナリティを出したらいいのに・・
  渋谷東映で最終回60人の観客と観たが帰りのエレベーターで
 若いカップルの女の子がエンディングの8mm映画の方が面白かったと
 漏らした。そのとおりだと思った。
  ここから又プラス妄想家として自分だったらこの映画どうするか。
 せっかく8mmに事故列車が映っていて軍に追われるいいアイデアが
 あるのだから、町からまず犬たちが逃げ出しているという設定ももらって
 列車に乗っていたのは、ソ連の宇宙飛行していたライカ犬の入ったカプセル
 だったとすると少年たちの物語も広がって、その世界で初めて宇宙に飛んだ
 生物・ライカ犬が何十年も地球を回っていてアメリカの砂漠に落ちた。
 果たして少年たちは、その犬とどう対面して自分たちの生活とかかわり
 を持つのか、シナリオの要を笑いにするか、感動ものにするか、それに
 よって死んでいるはずのライカ犬がどんな姿でカプセルから出てくるか
 いろいろアイデアがあると思う。
  最後は、自主製作の少年たちのゾンビ映画の救世主にそのライカ犬が
 なってしまうというのだったら、エンディングの完成映画につなげられる。
 まあ、このアイデアがいいかどうかは、別としてこの「スーパー8」実に
 もったいない爽やか系の映画だった。
 人の感じた方千差万別。劇場で足を運んで観られたし。
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by stgenya | 2011-07-05 18:03 | 映画・ドラマ

ムーランルージュの青春ロードショー公開

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9月17日より新宿K's cinemaにてロードショー公開。
 新宿東口徒歩2分。昔の昭和館。
 この劇場はいまは新しくなりましたが昭和6年ムーランと
 同じ年にできた歴史のある映画館です。
  エンターテイメントなムーラン的記録映画!!
「ムーランルージュの青春」    
時間 10:15, 12:30, 14:45, 18:35 の4回興行。
 7月より各チケットショップもしくは劇場にて販売。

 
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by stgenya | 2011-06-17 03:37 | 映画・ドラマ

ムーランの懇親会と映画試写会

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映画「ムーランルージュの青春」完成披露試写会が無事に
終わりました。
大勢の方が来られて当日券をお断りした方たちには申し訳ない
気持ちです。よく野末陳平さんが解説してくれて助かりました。
また何より明日待子さん本人がわざわざこの映画のために北海道
から来られて、91才にはとても見えない元気さで舞台挨拶されて
場内の反応はどよめきに近いものがありました。
 お疲れでしたが矍鑠とされて最後まで取材と挨拶にキリリと対応
されているのを見て感心しました。
また映画の前にムーラン関係者のレセプションがあって40人の明日
さんをはじめ沖縄の小澤公平さん、大阪の築地容子さんなどムーラン
の関係者が勢揃いしてもうこれだけ集まることはないでしょう。
これは貴重な会でしたがムービーで撮っていないのが悔やまれます。
 本当にありがとうございました。
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by stgenya | 2011-06-05 17:34 | 映画・ドラマ

ムーランルージュの青春

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やっと映画が完成しました。
1時間50分。
昭和6年(1931年)に開館したムーランルージュ新宿座の記録映画です。
佐々木千里という一人の小屋主による14年間、そして戦後の6年間
三崎千恵子と夫の宮阪将嘉座長による経営。
 軽演劇とレビューの四本立て興行。
文芸部中心にオリジナルにこだわった小劇場新宿座。
今、10日で三本のオリジナルを量産して新人を育てるプロデューサーが
いるだろうか。
ぜひ曲りなりにもプロデューサーという人は観てほしい。
笑いを届けているテレビ人もこの佐々木千里を見直してほしい。
いや、会社の社長、個人経営者、政治家。
つまりリーダー不在のこの日本でこのリーダーの指針の強さを見習って
ほしいと思う。
人に責任を押し付けず、行動はすべて自分の力で切り開いて、
俳優、作家、技術者、職人のもつ力を最大限に引き出して夢の創作に
花開かせる。
いまこそ「ムーランルージュ」が必要だと思う。
まず6月4日に中野ゼロ小ホールから公開します。

           記

     6月4日午後6時30分開場 
         午後7時上映
     入場料 前売り1200円(当日1500円)
     場 所 なかのZERO小ホール tel03-5340-5000
(JR中野駅南口下車新宿方面へ線路沿い徒歩5分)
     ※この日は、出演者の舞台挨拶あり。
      予定出席者 明日待子、楠トシエ、野末陳平、森川時久
            鈴懸銀子、本庄慧一郎、小澤公平他。
どうかよろしく。

  ムーランルージュ新宿座生誕80周年記念映画「ムーランルージュの青春」
             幻野プロダクション作品



Moulin Rouge
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by stgenya | 2011-04-13 16:28 | 映画・ドラマ

新しい人生のはじめかた

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「新しい人生のはじめかた」脚本・監督ジョエル・ホプキンス
出演ダスティン・ホフマン、エマ・トンプソン、アイリーン・アトキンス
 老年のダスティン・ホフマンが見事な恋愛映画に不変の演技を見せている。
原題は、Lastchance Harveyと示す通り、ベテランCM作曲家の
人生をつかむ最後のチャンスに大人の恋愛を掲げてみせる。
 脚本がいい。少なくともこれぐらいの脚本は日本では東芝日曜劇場で
倉本聡や向田邦子などの作家がいくらでも書いた。
 そして映画青年たちは当時、テレビをバカにするようにダメな映画脚本
で甘い恋愛や家族劇を書くと「東芝日曜劇場」じゃないんだからと否定し
ほおり投げた。しかし今の邦画やテレビドラマの惨状をみると、とても
東芝日曜劇場をバカにするどころか、作家と作品の独自性や技術では
学ぶべきものが多かったことを今気づかされる。
 さて映画だが老作曲家が娘の結婚式でロンドンに大事な仕事のプレゼン
を残して行く。しかし花嫁の父の役は、元妻の新しい旦那がやることに
なり、孤独をかみしめる。そして仕事も若い作曲家に取られてしまう。
ふんだり蹴ったりのハーヴェイにカフェパブで同じく40女のケイトと
出会う。ケイトも合コンで若い女に相手を取られて又独りになったばかり。
 ふたりは、少しづつ意気投合して、人間は一人ではつまらない生活に
なる。最後まで男として女としての可能性を諦めないで生きようと思い
はじめる。
 そして不安でいっぱいのふたりが待ち合わせをする。
ここで自分を取り戻せると希望を持ちだしたとき、ある事態で待ち合わせ
がダメになる。しかしふたりは、最後にチャンスのしっぽをつかむ。
 この出会いとラストのふたりの決めのセリフがいい。そしてそれぞれに
前半どう孤独で孤立しているかをパラレルに描いて、ふたりのデートに
話を結びつける手法もなかなかスムーズでいい。
そして何よりダスティン・ホフマンの微妙な演技がリアルで弧舟を匂わ
せてうまい。それからエマ・トンプソンのオールドミスの哀愁が胸に
痛い。「アフリカの女王」のキャサリン・ヘップバーンを思わせる。
 こんな映画の企画を日本で出したらすぐにつぶされるだろう。
しかしだ。こんな話の映画は日本で毎年最低夏と冬に二本作られていた。
それは「男はつらいよ」だ。
 地方の港町に未亡人がひとり、あるいはオールドミスが一人いて
毎日の生活を精一杯生きている。そこへ渥美清の寅さんが来て、笑い
をもたらす。女は少しづつ変わっていく。この中年女の心のうごめきを
よく山田洋次は描いていた。ただ「ラストチャンスハーベイ」と違う
のは、そんな女には想っていた男がいて寅がふられるという喜劇の
エンディングの差だ。
 しかし寅さん映画もない今この「新しい人生のはじめかた」はとても
参考になる映画だと思う。
こういう映画がもっとヒットしてロングランしてほしい。
たとえ単館でも。
さすがダスティン・ホフマンはすごい。俳優の年のとりかたの手本だ
ともいえる。名画座でぜひ見てほしい。
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by stgenya | 2010-08-17 18:09 | 映画・ドラマ

インセプション

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「インセプション」脚本・監督クリストファー・ノーラン
出演D・デカブリオ、渡辺謙、コティヤール、エレン・ペイジなど
 夢狩人の産業スパイの話。脚本は高度にトリックを組んで重層的に
見せる。SFアクションとしてキャスティング共に豪華。
 初めのカットが海辺にデカブリオが流れ着くところから始まり、
砂浜で遊ぶ無邪気な子供の姿へ声をかけようとして届かない。
 さて渡辺謙の大物実業家からの依頼が来る。
それは、標的に対してアイディアを夢の中へ入り込んで植えつける
ことだった。チームを編成してターゲットの夢に潜入する。
ストーリーは、このミッションを達成すればデカブリオ扮するコブ
が家に帰れて待っている二人の幼い子供に会えるというカセをずっと
引きずりながら進んでゆく。しかもどうも過去にコブはその子供の
母親である妻と複雑な事件を起こしている。
 その原罪がコブにはあるのだ。つらいミッションもこの原罪の超克
のためにはやらざるを得ない。
 各演技派ぞろいの俳優陣の顔と所作がともすると軽くなりがちな
この手のSFアクションを重厚に彩っている。
 さて、しかしだ。夢に入り込み潜在意識の秘密を取り出してくる
という筋立てでしかもそれは、夢の中の又夢という複雑なシノプシス
にしていて、パズル構成のシナリオの新基軸かと思いきや、わかり
にくすぎる。ひとつひとつプロットを追って行って、それぞれの夢
に交代で入り込むのを確かめて行ってもそれは夢だからと疲れる。
 特に後半のエレベーターで各夢の場面を階層にして映像的にスペ
クタルで見せるが、で結局はコブが子供と会いたいという一点に
集約されると正直バカバカしくなる。
 スパイアクションだから、もう少し爽快に話が展開して夢の中に
入り込むという技術についてもっと合理的で納得できる法則を編み
出してほしかった。
 夢はレム睡眠の正味数分しか有効でないとか、夢見ている間の瞳孔
の激しい動きが探索者の手掛かりになるとか、具体的な行為がほし
かった。手首に電極配線をつけてスーツケース型の機械につなぐだけ
の繰り返しは飽きるし、つらい。
 つまり他人の夢の又夢に入ったとき何か具体的な変化やアクション
がいるのではないか。
 だから名優がいい演技していてもどこのどの段階なのか測りかねて
ストーリーに入り込めない。これでは奇をてらった風変わりな活劇
にしか見えない。
 映画のアイディアはワンアイディアでいい。シナリオはできるだけ
単純に組んで複雑にトリックを仕掛けるべきだ。
残念ながら字幕タイトルも見ずに席をたつ観客が大勢いた。
ノーラン監督の語りの整理する手腕に期待したのだが本人自体消化
不良だったのではないか。
やっぱりこういうアクションはラストあっと言わせるオチがほしい。
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by stgenya | 2010-07-30 16:37 | 映画・ドラマ

イエロー・ハンカチーフ

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「イエローハンカチーフ」2007年アーサー・コーン制作。
脚本エリン・ディグナム監督ウダヤン・ブラサッド原作ピート・ハミル
出演ウィリアム・ハート、マリア・ベロ、クリスチィン・スチュアート
 もちろんこれは山田洋次監督作品「幸福の黄色いハンカチーフ」のリメイク。
まだ始まったばかりの松竹本社の東劇で夕方の回4人の観客で見た。
こんな大きくて立派な劇場で試写よりも少ない客と見たのは初めて。
 で映画は面白くないのかというと違う。良くできていて大人の映画になって
いた。ある意味ウィリアム・ハートは、ナイーブで人生の酸いも甘いも経験し
尽くした弱くて強い男を演じて高倉健とは又違った深い演技をしていた。
 最初の刑務所を出てくるところからあの二枚目俳優がこんな禿げでデブにな
ってしまったのか、少し哀れに思いながら見ていたら段々かっこ良くなってく
る。これはハリウッド俳優の層の厚さ。決して伊達にキャリアを積んでいない。
 ハチ公につづいてのハリウッドのリメークとしてはなかなかうまかった。
そしてこの映画を見ていて日本版と違った味。大人の成熟したラブストーリー
を感じた。どちらかと言えば「マディソン郡の橋」のような荒野にお互い傷を
もった大人の男と女が出会って激しく結ばれるテイスト。
 長い旅をして傷を負い持ち直してまた旅をつづける人は、みんな本来野生の
荒野で生きている。手負いは仕方ないし当たり前だ。お互い認め合っていい
ところを見て共生していくことが人生ではないか。この世に完璧なんてないよ。
そんなメッセージを感得した。人は完璧ではない。
それはマリアとウィリアム・ハートが結ばれるときマリア・ベロがいうミスと
いう単語にそのすべてが表されている。
 ガキのふたりは、それぞれ生い立ちの事情があるが若いときは好き嫌いの
基準が高く表面的になりがち。でもそれをいつまでも夢見ていたら人は生き
られない。どこかで納得して生きなければならない。
そんな大人の実像を見事に描いていた。
 またニューオリンズの荒廃した港町の雰囲気もいまの世相を切り取っていた。
カメラは、車のの中での三人のそれぞれの並走ショットの撮影を人物を浮きだ
させて全体にクリアで安定感のある秀逸な力量を見せていた。
そしてやはりラストのハンカチのショットは、日本版と同じ感動があった。
これは、一枚のハンカチーフではなくあの無数のはためきが長く待っていた
という女の気持ちを絵として表して映画的なのだろう。
それはまた原作のよさでもある。
 それにしても宣伝が下手なのか、こんな動員で大赤字ではないか。
松竹の向かいの歌舞伎座が取り壊されているのを見ても松竹映画の衰退を
痛く感じざるを得なかった。東劇の受付と売店の女の子二人と清掃のおじさん
はどこか昭和の匂いがしてとてもまじめに笑みを忘れず応対していたのに
残念な興行のはじまりでこころが痛んだ。
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by stgenya | 2010-06-29 03:34 | 映画・ドラマ

トロッコ

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「トロッコ」脚本・監督川口浩史。製作ジェイアンドケイエンターテイメント。
 日本映画を台湾で撮った作品。原作芥川龍之介。しかし全編ほぼ台湾語。
出演尾野真千子、原田賢人、大前喬一、ホン・リウ、チャン・ツァン他。
台湾と日本の協力した映画が今年になって続々出て来ている。
なぜかわからないがどれも何か現在の社会が忘れていたものを呼び起こし
てなつかしいココロ落ちにしてくれる。
 もともとホウ・シャオシェンの優れた映画が世界にでてきたのは20年前
だったが、その彼の撒いた種が台湾と日本の青年監督たちに芽生えて来た。
 ストーリーは、台湾人の夫を亡くした日本人の妻は、遺灰を届けるため
に台湾へ子供二人をつれて行く。そしてその台湾の田舎は森林鉄道があり
森で仕事をしている青年と日本名をもった老人に子供たちは会う。
 母親は、男の子をこれからどう育てていかなければならないか悩んでい
た。正直長男は反抗期にさしかかっている。台湾人の祖父ちゃんに亡き父
の持っていたトロッコの写真をみせるとトロッコと一緒に移っているのは
父ではなくその祖父ちゃんの子供時代だった。そのトロッコに乗って幼い
兄弟は、冒険へ出る。母は、心配して町中を探し回る・・・
 そして台湾を離れる日。息子も母も少し心が強くなっていた・・
これは、言ってみれば小津の「東京物語」の原節子の役を尾野真千子が
やっていて未亡人に子供が二人いたと仮定してつくったのではないかと
と見立ててもいいと思う。
 母親が義父に自分のこころのうちを告白するところのクライマックス
はすばらしく母一人で子を育てて生きるということの切実さが胸に迫る。
篠田正浩などの助監督を長くやってきた監督だけあって、演出にねばり
があって瑞々しくいい出来になっている。
 ただやはりあの原節子が義父に「私、ズルいんです。」というセリフ
の普遍性を再度認識してそれを超えるまでの人間洞察になってはいない。
まあ、それだけ小津・依田脚本のすばらしさが際立っているかの現れだが。
 でもこの川口という監督の力がいまの邦画の若手監督たちと一線を
かくしていることは明らか。山のようにつくられる新作で現場経験のな
い若手にただ安いからと脚本監督させている愚かなプロデューサーたち
は是非見てほしい。
映画撮影の現場と才能の発掘は、本来表裏一体の筈だった。
それが売れった原作と名のある俳優とお金と宣伝で駄作をつくりつづけ
て結局その若手監督にとっても不幸なものになってしまう。
「南極料理人」は短編しか撮ったことのない監督に撮らせて最悪のもの
になってしまっていた。それからするとこの川口監督はいいスタートが
切れたのではないだろうか。
 日本人の本来もっていた礼節や正直さ・勤勉を台湾の古い人たちは
今でも信じている。トロッコという前世紀の乗りものに乗って、その忘
れていたものを呼び起こしてくれる夕立ちのような映画だった。

 
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by stgenya | 2010-06-13 05:47 | 映画・ドラマ

春との旅

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「春との旅」脚本・監督小林政広、制作モンキータウンプロダクシ
ョン。出演仲代達矢、徳永えり、大滝修治、柄本明、戸田菜穂他。
 仲代さんが小林監督の脚本に気に入り自分のスケジュールのため
に三年監督に待ってもらってやっと今年完成公開した老人と孫のロ
ード・ムービーである。
 Vシネマの小さな映画からスタートして、低予算だけれど自分の
スタイルの映画を20年近くやってきたある意味孤高の映像作家の
新作は豪華名優を散りばめた人生そのものを正面から捉えた良心的
な映画になっていた。
 人間は自分の死とどう向き合いどのように対処していくのか。
高齢化社会の日本にもってこいのテーマだ。しかも放蕩のかぎりを
尽くして孤独で嫌われ者の仲代老人が孫の春が失業したことから寒
村のボロ屋から出て、兄の家、姉の旅館、弟夫婦の家へと自分を置
いてくれと訪ねて歩く。しかしどれもうまくいかない。
そして孫の春の実父を訪ねる方向へ・・・・
 こう書くと「東京物語」の構成を思い出す人もいて、なかなか
魅力的なプロットだと予想する。兄弟と言ってもみんなそれぞれ
大人になると自分の生活があるので子供の時のようにはいかない。
ましてやわがままで頑固な男寡ではなおさら。
 この老人仲代の身を預けるための兄弟周遊は、シナリオ的に行き
詰まる。しかしこの映画の本当の視点は、老人の人生放浪ではない。
 後半全員に断られた仲代に孫の春が実父に逢いたいと今度は
老人が孫に付き添って、再婚生活をしている香川照之の父に遭いに
いく。これがミソでここを思いついたときにシナリオは完成したと
思ったことだろう。
 この二部構成は果敢なく、人の生き方のバリエーションを表出し
てうまい。ただぼくは、春の実父の再婚相手の戸田菜穂のつくり方
がお手軽過ぎたように思う。もっとやり方があったんではないか。
 この後半室蘭の香川の家に行く。なかなか遭ってくれない父。
妻戸田は、いいのよ、春ちゃんにあってげてというが逃げる。
ここから私の創作だが、お祭りか、ばんえい競馬か、遊園地で仲代
の祖父が破れかぶれで一世一代の芝居をして、父と娘を遭わせる。
二人だけの会話がある。それを遠くから見ていた戸田と義父の仲代
がやっとほっとする。すると今度は戸田が家族づれで溢れている
お祭りの中でお義父さん、家にしばらくいてくださいと映画のよう
に言う。しかしもう仲代は自分の死期は自分で引き受けようと決め
ているので、つい刑務所に入っていて遭えなかった気の合う弟の
ことで嘘をいう。いや、そいつが大金当てて一緒に住もうと言う
んだと笑って戸田にありがとうと断る。
 帰りの電車でそのことを知っていた春は祖父にバカだとなじる。
でラストシーンになる。
 映画の途中からそんな別の筋書きを考えて見ていた。
またもうひとつ気になったのが淡島千景の姉と旅館の客席で仲代
と会話するのに逆目線でわざと撮っていた。
どうだろう。何か変った趣向でやりたかったのだろうがその効果
はちょっと疑問だった。すれ違いを表すのだったら他も統一して
いないといけない。スタイルとはそういうものではないか。
 まあ、余りにシナリオの練られていない邦画の多い中でいい
キャストに恵まれ、いい映画になったのではないだろうか。
この先拡大ロードショーをのぞむ。




 
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by stgenya | 2010-05-31 18:09 | 映画・ドラマ

極楽大一座 アチャラカ誕生

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「極楽大一座アチャラカ誕生」脚本白坂依志夫、監督小田基義
昭和31年東宝作品。出演エノケン、ロッパ、金語楼、三木のり平、
トニー谷他。
 先週から神保町シアターではじまった「喜劇映画パラダイス」
特集の一つ。「喜劇人オールスター大行進」の「乱気流野郎」
(松竹にクレージーが出た珍しい番匠義彰監督作品)と一緒に見た。
 「アチャラカ誕生」の元は浅草の昭和7年の舞台が元でその映画版。
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しかもこの作品があの名脚本家白坂依志夫のデビュー作。
だからファーストシーンで戦争中の慰問劇団公演が出て来て、
戦後ある村でその時の上官と部下劇団員が再会するという構成に
なっていてそれに白坂氏を思わせる脚本家志望の青年と元上官で
村のご意見番の古川ロッパの娘との親に反対されながらの恋愛を
絡めて作られている。どさ回りの芝居ではなくリアルな芝居を要求
される羽目になる劇団騒動の面白さがポイント。
 しかも女形しかいなかった劇団に急遽ヒロインに抜擢される売店
の娘役が神田正輝の母の旭輝子だった。原作が日劇の東京喜劇まつ
りとなっているから急拵えでつくられた53分の中編。
金語楼が座長で看板スターのエノケンにのり平、トニー谷のふた
りの女形がからんでのドタバタ劇中劇。さすがにこの名喜劇人の
演技が今でも笑わしてくれる。特に金語楼とエノケンの掛け合い
は、安定感があり、エノケンがボケても金語楼が引いて受ける技
は脂ののったベテランの味。
 話の芯が古い浪速節のどさ回りの芝居では客が来ないから、
アメリカの南北戦争を題材に新派大悲劇をやろうとするもの。
 だから秀吉や義経をやっていた劇団員がいきなりトムとか
メアリーとかになって翻案芝居もどきをする。
つまり「アチャラカ」の誕生というわけ。
これは又戦後民主主義のGHQの検閲の名残りのような路線で
もある。
 しかしこんな昔の中編喜劇に劇場は満員だった。
そしてその観客たちは、もちろん中高年ばかりだがどれも満足
して帰って行った。むしろこんな平成の沈鬱な時代だからこそ
カラッと明るい喜劇を観に来ているのだろうか。
いま吉本を中心にしたお笑いの氾濫の中で昭和の実力派の喜劇
は本当に有効なカウンターになる確信がした。
 面白くないのに事務所の力で露出しているニセモノと舞台で
培ったホンモノの喜劇ではその映画から受ける生命力が全然違う。
 是非のこの喜劇特集は6月11日までやっているので足を運ば
れることをおすすめする。
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by stgenya | 2010-05-22 18:13 | 映画・ドラマ