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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

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「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」日本映画エンジェル大賞作。
 原作は本谷有希子の戯曲。脚本・監督は吉田大八。
主演佐藤江梨子。永瀬正敏、永作博美、佐津川愛美共演。
 CMディレクターの吉田が初監督。
どうしてかCMの人たちは、偶然にしても地方にこだわる。
「茶の味」、「嫌われ松子の一生」「下妻物語」など。
 この映画を観て、微妙なバランスでその鑑賞感が漂う。
なんだろう。と思う。この手の映画は、感動して涙したとか
テーマに鼓舞されて深く考えさせられたとか、そういうものの
読後感はない。
 エキセントリックなキャラクターとこれありかという展開の
面白さで見せるポップ映画である。
ファーストシーンの路上のネコからダンプに轢かれて両親が
死ぬところから女優を目指して上京していた姉・澄伽(サトエリ)
が帰ってきて、漫画家志望の妹や家を継いだ兄夫婦との
間で相克があり、雑貨屋の同級生荻原(山本浩司)との再会
で学生時代から上京するための金稼ぎの援助交際もどき
をしていたことや、東京で借金をつくってヤクザが金を取りに
来たりとハチャメチャなストーリーであるが、単純にワガママ
姉さんと引き篭もり妹と、近親相姦の孤独な兄との家族
ドラマと言えなくはない。
 ここで取り扱われているのは、自我と自我のぶつかり合い
のカリカチュアである。
リストラされた、恋人にふられた、成績が落ちて怒られた、
満員電車で足を踏まれた、株が下がった、そんな日常に
くよくよしている腑抜けどもよ。
黙ってぶつぶつ嘆いている暇があったら、本当に悲しいこと
や不満を勇気を出して見せろ!
ハチャメチャでも無様でもキモくてもいいから、本当に生きて
いるなら、本心を吐き出せよ。
なんだかそんなことを言われているようにこの映画を見て
感じる。そこが映画のミソか。
 しかしこの映画に最後まで違和感を感じてバランスを
崩してしまったのには、演出の問題がある。
ポップ映画は、基本的にはコメディー映画のセオリーに近い。
スタイルのいいサトエリが体当たりで、また永作も体当たりで
演じている姿を映像にするのに、カットがスタティック過ぎる。
落ち着きすぎている。文芸映画じゃない。ところどころマンガ
のカット割り的な映画のつくり方をしているのだから、もっと
撮影もつなぎも粋があってよかったと思う。
セリフなんか被ってつないでもよかった。
この監督の持っている正統派てきな真面目さがこの作品で
は邪魔をしたように感じた。
 監督に自ら言っていたが宍道役の永瀬が実はキーポイント
であるがこの造形がよくわからなかった。
情けない隠微な男しかあれでは映らない。死んだ父母の何か
もある筈だ。またケイタイの電波も届かない田舎で焼き物を
して生きている人生が決まりかけている男である。
ここが激しく強烈な内面がのぞいてのサトエリ爆発ならまだ
読みやすい。おしい。
 本作品で拾い物は、永作博美である。
彼女のどんなギクシャク、理不尽な家庭でも家庭にいること
を欲求している健気で逞しく又切ない演技は、新境地と言える。
彼女をキャスティングしてなければこの映画の魅力は、
半減していたと仮定してもいいくらい、すばらしかった。
「地方」と「都会」の差など十分300円のインターネットで
つながってしまうんだ。
日本人の地の宿命と巨大都市の壁とを突き抜けるテーマが
うまく見つかればこの映画の向こうに鉱脈があるのだろうが
それはキャラクターとスタイルとテーマがうまく絡まなければ
ならない。
それができれば面白いところだが・・・
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by stgenya | 2007-11-29 13:33 | 映画・ドラマ