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クライマーズ・ハイ

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「クライマーズ・ハイ」原作横山秀夫。監督原田眞人。
脚本加藤正人、成島出、原田眞人。出演堤真一、堺雅人、山崎努他。
 NHKで佐藤浩市でドラマにもなった日航機墜落を扱った原作。
「あさま山荘」で黒澤バリのマルチカム撮影を自らの手法にした
原田監督のドキュメンタルタッチの新聞社内群像劇映画。
なかなか配役のポジションがよくこなれていて飽きることなくに
新聞を発行する仕事のエキセントリックな男達の葛藤が描かれて
いた。組織と個人。今までにも軍隊ものや警察ものによくあった
集団と指導者の葛藤劇。とくに生死を目の前にしたり、巨大な事
件に全員が運命を共にしているようなシチュエイションなどに際
して使われる手法。
 原田眞人は、同船に乗り合わせた人間たちの全国紙に負けずに
トップ記事を抜くという目的に向かっての気持ちのぶつかり合い
を時に失敗したズーミングカットなどをわざと織り交ぜながら、
地方新聞社の編集部の中を活写しようとした。
1985(昭和60年)8月に起きた524人を乗せたジャンボ機が墜落
して、その事故の実態を克明に報道していく中で全権に大抜擢さ
れた主人公悠木の個人史が浮かび上がってくる。
 さて、そこで見終わってリアルな怒鳴り合いの報道の場は、
成功していたと思うが、シナリオの構成と映画として着地がいま
一何かしら工夫が要したのではないかと感じた。
「あさま山荘」も「日航機お巣鷹山墜落事故」も昭和史に残る
出来事なのでこの現場をリアルにやれば、いくつかの戦記もの
のようにそれだけで映画を楽しめる。
しかしこれを「インディアンサマー」を撮った原田眞人が黒澤明
から映画の現場を学んだ人としては、この史実からどう人間の
中身を引き出してくるかというところにもう一つ練り込まなくち
ゃならないのではないだろうか。
 撮影の技量がせっかく備わってきたのに本作りからの努力が
ほしい。桂千穂の弁だと加藤正人や成島出が書いた本を決定稿
の段階で監督がひとりで直したようだ。
構成が谷川岳に死んだ同僚の息子と登る話と墜落事故の全権を
任せられたときの話と悠木自身の個人史の三つに分けられて
ストーリーを進めている。
ところが、悠木の生い立ちはいいとして別れて住んでいる息子
淳との話がよくわからない。しかも息子が衝立岩に打ったハー
ケンが最後の要になっている。悠木という人物はどういう男
なのか墜落事故とダブってこない。
カーク・ダグラスのWチェックといってもこれがこの映画の
へそに成り得ていない。墜落原因のトップ記事を抜けなかった
地方新聞社の話とどうしてもなってしまう。
原作は上毛新聞の記者時代の体験談があるからいいが、映画
はここからもう一つこの事故に迫ってほしかった。
それは、事故の当事者の話である。最後に家族に別れをメモし
た乗客の有名なエピソードが披露されるが、こちら側からの
アプローチがこの映画の構成であるともっとエンターテイメ
ントになっていた気がする。
また新聞社の最初に墜落現場に入った堺と滝藤の記者がその
壮絶な地獄図に後半気が変になる件があるが、墜落現場の
描写が描けてない(おそらく被害者への配慮で)分すべて
嘘くさくなってしまっているのは、もったいない。
あの地獄図はいまでもウワサにものすごいものだったと
聞いている。ここが頭で押さえていないと映画としては、
致命傷。別のアプローチでいくならやはり当事者を逃げて
完成しないのではないか。
夏の命日に近づいて、この映画を上映した東映の企画はいい
と思うし、堺雅人や堤真一の演技もいい、監督の技量もある。
なのに原作を超えた大きな映画に化けなかった。
丁寧なつくりなのにもったいない。
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by stgenya | 2008-08-09 12:48 | 映画・ドラマ