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僕らのミライへ逆回転

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「僕らのミライへの逆回転」脚本・監督ミッシェル・ゴンドリー。
出演ジャック・ブラック、モス・デフ、ダニー・グローヴァー
 単館ながらささやかなロングランになっている。
キャッチコピーが超アナログな最先端ハンドムービーとある。
まさにこれは、ぴったりだ。そして見終わってO・ヘンリーの小説
を読んだときのようにほのかな暖かい気持ちになる。
原題の Be Kind Rewind 返すときは、巻き戻しをお忘れなく。
町に古いビルがあり、そこにさらにぼろぼろのレンタルビデオ屋が
ある。しかも今時VHSのビデオレンタルだ。それを借りに来るミア・
ファローからしてアナログだ。ここで登場するジェリー(J.B)と
店員のマイク(M.D)は、幼なじみ。しかもこの店は街の再開発で
取り壊しを迫られている。物語は、発電所で感電したジェリーが
店長の留守を預かったマイクのレンタル店に来てビデオをすべて
電磁波で消してしまう。さあ、大変。客は「ゴースト・バスターズ」
を借りにくる。仕方ないので時間を貰ってその間に自分たちでその
映画を古いビデオカメラで高校生の映画ごっこのように作り上げて
しまう。そして次ぎに来た客にも「ロボカップ」「ラッシュ・アワ
ー2」などとどんどんクリーニング屋の娘もかり出してつくって
いく。しかしこれが逆に評判になって店は大繁盛・・・
しかしシガニー・ウィバーのハリウッドからの弁護士が来てすべて
著作権侵害で訴えられる。店も取り壊しが決まる・・・
しかもこの店の場所が元はジャズアーチストの生家だという噂を
店長もマイクも誇りにしていたが、それも嘘だった。
でもここで起死回生の一発の最後の街の顧客聡出演の映画の構想
を考えつく・・・・
 と奇想天外、ハチャメチャなストーリーだがついついこの町の
住人になった気分でいつの間にか一緒になって手作りの映画製作
を応援している。映画のパロディーがでてくる度、うお「2001年
宇宙の旅」か「ドライビング・Missデイジー」かとうれしくなっ
てくる。バカバカしくてあり得ない展開なのに物語に引きずり
込むフランス出身の監督力に感服。
これは、行ってみれば落語の「長屋モノ」だ。八っさん熊さん、
大家の登場する日本の落語の世界に近い。
昔金語楼やバンジュンのこれに近い映画があったがうまく米国で
つくったなあ、と思う。まさにお正月映画にもってこい。
それからある街の小さなレンタルビデオ店の店員の話のつくりが
なんとなく「リトルショップ・ホラーズ」のテイストを感じた。
名もなく金もなくしがない若者が大それた夢を見る。
そんな短編小説のような味わいが全編に漲ってとてもよかった。
ここにあるのは、人間の顔と顔とがしっかりと向き合って結びつ
く心温まるツナガリである。
文明が個の世界へ急進化してしまった世界でどう人間はつながれ
るか、と教えてくれる"うまい映画"だった。
是非このまま正月までロングランして家族づれか友達同士と見
に行ってほしい。寒々しいご時世きっと暖まることでしょう。
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by stgenya | 2008-11-23 16:54 | 映画・ドラマ

岡山の娘


「岡山の娘」脚本・監督福間健二。製作タフママ+幻野映画事務所。
 詩人であり、映画評論家でもある福間健二によるオリジナルシナリオ。
11月15日よりポレポレ東中野にて公開中(12/5日まで)。
 映画の可能性をいま如実に示してくれる事象としてのめずらしい日本
映画作品であると思う。
 低予算で過去に二三本のピンク映画や自主制作の経験はあっても
ここまで劇場公開へ個人の力だけでやってこれたのは、とても稀有な
例ではあるが、これがこれから誰でもが高級車を買うように映画監督
になるという時代がくる先駆けの映画になるかもしれない。
 映画は、母の死で借金をかかて大学をやめてフリーターになるみづき
とその周りに浮遊する小説家志望の女友達やヤクザの女房で未亡人
になり、子持ちで青果市場で働く幼馴染の女、あるいは映写技師見習い
のひきこもりの少年などとの交流を描いていきながら、スペイン放浪
から幼い時に別れて以来顔も知らない父が帰ってくる、この間の少女
から大人へ変化していくみづきの心の葛藤を描いている。
 映画の文法も表現も特殊なのでこの語り口になかなかなれないかも
しれないし、確かに稚拙な面(予算や諸条件のために)もあるがこのひとり
の岡山の素人の女の子を観つづけるとなんだかやさしい気持ちになる。
 これは、ある意味突っ込みどころ満載かもしれないが、この飽和状態
の現在の日本映画の中でテーマと時代性をこれほどストレートに語っ
ているのは少ないのではないか。
泣かせや笑いのエセエンターテイメントの失敗作はごろごろあるが
今の重要なテーマを語っているという点で貴重だと思う。
それは、人を殺す衝動にかられる孤児の映写技師の少年や天涯孤独
になって自己破産してアルバイトもくびになるみづきなどの心の枯渇感
をこの映画では、弱い心というキーワードで救っている。
この映画の中で詩人北川透さんが直にみづきに語りかける場面がある
が、ここで何かを表現する人は「弱い心」をもってなければならない。
という。
自分が「弱い心」だからと思って、誰でもよかったと人を殺す者、内に
こもり自傷行為する者、現実生活で自己主張せず仮面のネットで暴走
する者、対立構造のはっきりしていた30年前だと貧乏という言葉が
物語の帰結に持ってこれたが今は、人間個人の解決しない問題として
社会現象が起きるので創作がそこに追いつけない。
かつてのように神の沈黙とか、不条理とか言ってこれたが今起きている
この世界の銃乱射事件や子殺し親殺しは、そこに踏み込むと行き場が
なくなって戻れなくなってしまう。
たがらセンチメンタリーかスラップコメディーばかりの映画が量産される。
この映画では、「弱い心」は、弱い心でいいんだと言ってくれる。
まず自分の「弱い心」を大事にすること。そしてその「弱い心」を自覚し、
受け入れることから出発すること。
もともと人間って、完全でもないし点数もつける人によって違うんだ
もの。だったら人より「弱い心」を持っているなんてことに拘らなくても
いい。まずここから見つめ直そうとしている珍しい映画である。
それを自覚したみづきは最後に亡き母の歌をつい口ずさんでしまう。
みんな、それぞれの歌があるはず。それを歌えばいいのだ。
【ニコニコ動画】宮台真司vs福間健二
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by stgenya | 2008-11-18 18:09 | 映画・ドラマ