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がまの油

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「がまの油」製作ファントム・フィルム、ピラミッド・フィルム。
脚本うらら、監督役所広司、出演瑛太、二階堂ふみ、小林聡美、
 初監督作品。俳優が映画監督をする例は昔からある。
これで成功したのは、伊丹十三と北野たけしぐらいである。
映画って人生最高のおもちゃである。一度味わうと病みつきになる
ものだ。もっと言うと映画監督は、素人でもスタッフがプロだった
らできる。また映画というものを何もわからないでつくっても何か
自分の質みたいなもの・生の部分が自然とでてしまう。
自分にこんな残酷な面があったとか、イヤらしい面があったなど
思ってもいないものが必ず出る。
役所さんの「がまの油」は、橋本広司という人間のトリッキーな
面がにじみ出ている。ファンタジーという宣伝文句でいわれるが
70年代のアングラ・ブームのような破天荒さがどうしても出て
超現実味を今風にファンタジーと名乗っている。
私は、この「がまの油」を見て森田芳光の「そろばんずく」を連想
した。はじめて映画で自分の形にならない想念をストレートに出し
てしまう処女感覚に似ている。
そして役所さんは、がまの油売りが子供時代に言ったという「人は
二度死ぬ」というテーゼを映画の結にしている。
体が死んでもその人を知っている人が生きている限りその人は死な
ない。そしてその人を知っている人がいなくなったら本当に死ぬ。
まあ。こういう想念を言いたかった。
それは、おばあちゃん子、おじいちゃん子の主人公が語るところで
役所さんの生の部分が出ていた。
 映画自体としては構成と脚本が弱い。何よりも(ファンタジー)
をやるときは設定をしっかりと組まないといけないが息子が恋人
とどういう関係にあって、少年院の友人とどういう立場で宇宙へ
行こうとしていたのか、ずっと話が進んでいっても模糊としている。
ここがイマヘイ学校出のスクリプターのうらら脚本の弱点。
デイトレーダーの父と豪邸でカメの世話をしている母と、好青年
の息子とその恋人ととの関係がよくわからない。
でもここから出発して息子の供養の旅へ出て熊に出くわしたり、
内緒にしていた息子の恋人とのケイタイでの仮のつながりをどう解消
するかが監督のやりたいことの一義であるがゆえに設定をすっ飛ば
したように見えてしまう。これは残念だった。
少なくともラストの息子の恋人と父との出会いが感動的につくれて
いるのだから、がまの油売りの死のテーゼと絡ませてなぜ父は息子
の恋人へその死を報せなかったか、家族に恵まれずに育った父が
家族にどう接していたか、掘り下げるべきだった。
 やりたいことを一度やってみたい。CGで熊と格闘したり、仏壇
の巨大な舞台をエンディングにつくったりして美術の稲垣ちゃん
もよくこたえてた。
しかし映画を二時間以上にしないで初めの息子と父と恋人との
設定をうまくコンパクトにつくれていたら、もっと短くスマート
な初監督作になっただろう。
 時間がたって役所さんが又やりたいとなったときこの辺が見えて
今度はうまくやってくれる気がする。まだ時間がいるだろう。
でも自分の劇場公開映画をつくれることは幸運なことだ。
今思い返して、20年ぐらい前役所さんが八ヶ岳の別荘へ行き来し
ていたとき、8ミリでいいから映画をつくろうよ。とキラキラした
目で言っていたのを私は覚えている。Vシネマから黒沢清、青山
真治、「うなぎ」、ハリウッド映画と役者として登りつめてよう
やく自分の映画をつくった。なんだかその長い歴史を見ると
「がまの油」には、別の感慨がある。
できるだけ多くの観客に見て貰えるように望む。
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by stgenya | 2009-06-21 14:23 | 映画・ドラマ