<   2009年 07月 ( 2 )   > この月の画像一覧

ディア・ドクター

d0068430_2257886.jpg

「ディア・ドクター」原作・脚本・監督西川美和。
製作エンジンフィルム他。ラインP秋枝正幸。
 この西川という女監督は、不良である。
「ゆれる」についで地方都市のど田舎が舞台で僻地医療の話
となれば、今日の日本社会の現実を切り取って鮮やかに物語
にしてみせるまじめな映画かなと思ったら大間違い。
 鶴瓶の人なつこい顔にだまされそうになる。だから予告で
もこの映画の正体を見せないできたのか・・
本当に知らないでチラシだけで観ると山田洋次が「同胞」な
どでやった地方の村の現代日本を見せられると思ってしまう。
西川美和監督は、この自分の原作が直木賞候補になったぐら
い脚本はなめらかだ。
この人は、文士だと思う。欠点は、監督としてはまだまだ
発展途上だということ。その証拠は、カッティングにある。
鶴瓶の田舎医者に新人の研修で若い瑛太が赴任して村での
医療と人の生活にスポットが当てられるとどうしてもコメデ
ィタッチを連想してしまうし、実際西川はこの映画のクライ
マックスがかなりショッキング的な方向にゆく分前半を
コメディタッチで描いている。
しかしこのタッチがイマイチ難しい。
それは、ファーストシーンから医者が逃げて警察が探して
いる件もカット、特にリアクションカットが間延びしている。
もちろん笑いのカットだからカット尻をわざと長くしている
のはわかるが、間のつなぎが悪い。
それは、喜劇を理解しているかどうかだと思う。
西川監督は、人間の中に渦巻くあやしいマグマに興味があっ
て前半は、付け焼き刃の感がする。
刑事が2人、忽然といなくなった僻地医者たる鶴瓶を追って
訪ね歩くシーンと鶴瓶医者が村人によって頼りにされて八千草
薫のおばあさんの胃痛の診断をめぐってどうして疾走してし
まったかのメインシークェンスが同時進行で飽きさせずぐい
ぐい引っ張っていく構成がしたたかでうまい。
脚本は、うまいが映像にピタっと来ないのだ。
喜劇は、テンポと日常から欠落するズレの面白さだ。
それがど真ん中のボールを拾うところで少し場違いな感じ
がした。
僻地医療と老人の性と黒澤的な師弟愛も出来たはずだった。
あえてそれをやらず自分の性癖の方へと傾いて行った。
それはそれでこの監督の新しい畑でユニークで文句のいいよう
がない。日本映画になかった女流の不良で優等生な映画監督だ。
キャスティングはみんなうまくいっていた。
西川さん、あとは、笑いの画面をどうつくるかだ。
それができて商業映画の監督である。
[PR]
by stgenya | 2009-07-31 23:45 | 映画・ドラマ

サンシャイン・クリーニング

d0068430_17501996.jpg

「サンシャイン・クリーニング」脚本ミーガン・ホリー、監督クリスティン・ジェフス。
ビッグ・ビーチ制作。四館から全米ヒットにつながった頑張りや映画。
 女性監督、プロデューサーでチームを組んで作っているグループ。
おかしくて切なくて驚いてでも負けずに生きていく女性を描く。
脚本の元は、コンペで賞をとったものをプロデューサーが採用したもの。
 コメディーの基本は、主人公が冴えない、弱い立場。そして窮地に
おちる。これを気転やキャラクターや偶然をつかって乗り切るという
要素がそろっていること。
 この映画の場合、完全なコメディーではなく、ストーリーラインに
不幸な過去を抱えた家族のハートフルで連帯感を取り戻すことで
人生を再生していくという大きな柱がある。
実際見終わるとかなり悲惨な家族の過去がある。
これをそのままやればシリアスなドラマになる。
しかしそうはしなかった。元ハイスクールのアイドルチアリーダーの
姉のローズが30過ぎて未婚の子持ちで清掃人。妹のノラは親掛か
りで定職もなくふらふらしている。父親はエビを買い込んで一儲け
しようとして失敗したりする。
そんな中不倫相手の警官からローズが事件現場の特殊清掃を
高給だからやってみないかと誘われてはじめるのがタイトルの
サンシャイン・クリーニングである。
事件現場の死体をかたづけた後の清掃は、それぞれの場面で
その被害者、加害者の素顔がドラマになる。
事件ものでは、これからサスペンスやバイオレンスにもっていき
やすい素材だ。
しかしこの映画は、女性監督らしく冴えない主人公が子持ちで
どう世の中を前を向いて生きていけるかという視点に焦点を絞っ
てハートフルな映画にしたかった。
そしてそれはその方がこの凄惨なモチーフを扱った割りに清々し
く明るいエンディングになった。
 暗い妹の存在と妹がやらかした事件でこの家族の危機をつくり
息子の誕生日にその和解で話の帰結をつくっている。
ただストーリーとしてやはりその現場清掃の当事者とその家族の
扱いが自殺した人の疎遠になっている家族リンとの接触だけで
はもったいない気がする。
もっとこの清掃という仕事からローズの人生に影響を与えること
ができた。それが少しの不満だったが、人物のキャラクターが
それぞれにうまく作られて明るいヒロインと凄惨な仕事との微妙
な混ざり合いで一気に物語の橋を渡りきっていた。
これは、クリスティン・ジェフズ女流監督の性癖だからこれは又
これで独特の映画の味になっている。
 僕はこの映画であの懐かしいアラン・アーキンが年老いた父親
役ででているのがうれしかった。
「キャッチ22」で独特のおかしさを表現していた名優は、やはり
いい味を出していた。
経済が落ち込み毎日に不安なアメリカでこれが大ヒットしたのが
わかるような気がする。
一番アメリカ・プラグマティズムの伝統である困難でも明日を
夢見て生きようというテーゼをうまく庶民の映画にしたところが
この映画の成功だったのだろうと思う。
渋谷で夜15人の観客だったのが惜しまれるが地道にロングラン
してほしい。
[PR]
by stgenya | 2009-07-17 18:36 | 映画・ドラマ