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イングロリアス・バスターズ


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「イングロリアス・バスターズ」脚本・監督C・タランティーノ。
彼の興行成績の中でトップになったらしい。
しかし米国ほど日本では熱狂的なロングランにはならなかった。
 まず長い上映時間で俳優の演技と物語構成の運びとが緊張感が
あって、いままでのタランティーノ作品に見られない重量感が
あった。これは、ある意味B級アウトロー映画大好きの彼の中で
行き着いた到達点であるのではないかと思った。
 悪を悪らしく描く。フィルムノワールとしてのピカレスク。
彼の持ち味であるグロ(エログロのエロは彼は淡泊で薄い)を素材
にしながら復讐劇を第二次大戦という時代劇として描いた。
一人のユダヤ人の女の子ジョシュナがドイツ人ランダ大佐のSS
から逃れてアメリカのブラッド・ピット扮するレインのドイツ・
ハンター軍団の力もあって、成長してフランスで映画館の館主
となった彼女・ショシュナがヒットラーたちを迎えての映画会で
復讐を成し遂げるという話で時間の制約でカットしているため
に随分荒いところもあるが最後まで見せきる。
 面白くなかったら、金を返すという日本の興行宣伝にはかな
っていた。又ジョシュナ演じるメラニー・ロマンが昔のドヌーブの
ように美しく、ドイツ人大佐ランダの役のクリストフ・ヴァルツ
の演技がすばらしい。はっきり言ってブラット・ピットがかす
んでいた。この寺島進似のオーストリア出身の俳優は掘り出し
物である。カンヌでは助演男優賞をとったらしい。
 では映画としてどうだったかというと、成功作とは言い難い。
確かに演技はいい。カメラワークもコッポラばりに重厚感があ
って、長回しとミディアム・ショットの会話といいうまくでき
ている。しかし見終わって、オチ無いのは何か。
やはり映画とは、どんな荒唐無稽をやってもウソだったら、
しらけてしまう。シナリオ設計では特にそれが要求される。
むしろ荒唐無稽なほど、SFなどそうだが、事実は事実らしく
詰める。
 この映画の場合ヒットラー以下ナチス幹部が一フランスの
映画館でバスターズによって全滅させられたという最後の
シークウェンスは史実と違いどうしても落ちない。
歴史としてウソでは、どんなに勇敢にバスターズが戦っても
ユダヤの女が復讐しても白けてしまう。
これがどこかわからない戦争での話なら、すばらしいのだろ
うがそれは考え方が違ってしまう。
もしこの話でシナリオをつくるなら、ヒットラーの最後は
実は影武者で別にフランスに逃れていて映画を呑気に観て
いたとか設定を初めにつくってなければ成り立たない。
これは、とっても残念だった。
若い日本人がこれを観て、タランティーノはやっぱすごい
と言って史実を間違って覚えてしまうおそれがあるし、こ
れを正月の3日に観たが隣の中高年の夫婦は正月に観る映画
じゃないなとため息をついていた。
うまくつくった映画といい映画は別である。
映画小僧タランティーノの技術は磨かれたが、作品の主題
を語る目は昼寝をしたままのように感じた。
でも、あんた、だいたいタラちゃんは、B級志向なんだぜ。
そんな主題とか辻褄とか言っていたら、笑われるぜ。
といわれそうだけれどそれは本物のタラちゃんファンじゃない。
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by stgenya | 2010-01-17 12:38 | 映画・ドラマ

秋日和

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新年あけましておめでとうございます。
  荒海へ船出する水夫のように
    心引きしまるのを笑って乗り切りたいものです。
 
「秋日和」S35年製作。脚本野田高悟、監督小津安二郎。
 出演原節子、司葉子、佐分利信、中村伸郎、北竜二。
正月に観る映画が本当になくなった。
いわゆる正月映画、初笑い喜劇なとが正月興行からなく
なって何年経つのだろう。寅さん映画の終了が最後か。
仕方ないので家で「秋日和」を観た。
宝石のような映画だ。若いとき小津映画をフィルムセンター
へ通って全部観たとき、正直晩年のこの作品は主題のくり
返しで退屈だった。それが年とって煮物が好きになるよう
に恋しくなった。この映画は「晩春」の母版だと言えるかも
しれないが、この前年に撮った「お早よう」と同じく無声映画
でやってきたコメディとペーソスの再生だったように思う。
 60年安保の年にこれをつくり、黒澤が「悪い奴ほどよく眠
る」と年跨いで「用心棒」をつくる。
時代に背を向けて娯楽をつくった。
当時の批評家は、小津も黒澤ももう死んだとまで言った。
しかしこの「秋日和」を今回観て、ずっと笑いながら感涙
を禁じ得なかったのは、失われたものへの哀切が貫かれて
いるからだ、とわかった。
小津さんは、よく見ると物語をはじめる前に喪失感をすで
に提出していて、それをどう乗り越えるかをいつも語って
いたのではないか。
父を亡くして母娘で生きてきた未亡人。
母を亡くして継母で育った元気な岡田茉莉子。
子供が大きくなって親の言うことを聞いてくれない父親。
妻を失って痒いところに手が届かない平山。
愛を見失って家を飛び出す娘。
戦争で大事なひとを失い、竹馬の友を病でなくす。
仕方ないけどこの現実を受け入れて生きていくしかない
だろう。と小津さんは微笑んでいるように見える。
ロスト・ライターの小津安二郎。
これを笑いとペーソスで役者の配置やセリフ構成を磨き
あげて宝石のような映画をつくった。
この宝石は、人間が年をとるにつれて輝き出す。
半世紀前の映画だよ。しかも世界中でまだまだ輝いている。
こんな映画を今誰がつくっているのだろうか。
正月は、小津を観る。
これがしばらく習慣になりそうだ。

 
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by stgenya | 2010-01-06 07:05 | 映画・ドラマ