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目白三平物語うちの女房(鈴木英夫特集)

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「目白三平物語うちの女房」脚本井手俊郎、監督鈴木英夫
昭和32年東宝、原作中村武志、出演佐野周二、望月優子、団令子
 先週から渋谷のシネマヴェーラではじまった鈴木英夫特集の一
本。当時国鉄マンで作家だった中村武志の人気原作シリーズでこ
の後四年間に筧正典監督らと数本のシリーズが出来た。
 その最初の映画がこの映画「ーうちの女房」(後半のシリーズで
は笠智衆が主演する)。笑いとペーソスのお手本のような映画だ。
 ぜひこの期間中に観てもらえるといいと思う。
子供ふたりのしがないサラリーマンの家庭劇。夫が箱根に一人で
知り合いの旅館へ息抜きに温泉旅行へいく。妻と子供は留守番。
しかし夫は旅館の隣の部屋に自殺志願の青年がいて結局深夜まで
悩みを聞く羽目になり、寝不足で帰宅する。女房は女だって息抜
きほしいわと呟く。女学校の同窓会の報せが来て行こうか迷う。
 そんなとき町内のダンス講習会へ夫三平は誘われて八百屋の娘
とダンスをする。そしてワイシャツに間違って口紅が付いてしまう。
夜帰宅すると妻望月優子は、本当に弾みで付いたかどうか、確か
めるために自分も口紅を塗って三平と踊ってぶつかってみる。
妻の疑いは晴れたけど、私と踊ってと深夜夫婦でダンス。
 この件の望月優子がすばらしい。絶妙の演技をする。ここだけ
でも喜劇をやる人は観ておくべきだ。普段社会派のリアリズムの
演技で知られる望月だが、怖い顔、寂しい顔、うれしい顔、これ
らを絶妙のタイミングで演じる。すると家庭にいる妻の切なさが
際立つ。それが又可笑しくて何回観ても笑ってしまう。
 ストーリーは、この後ダンスを誘った八百屋の娘の縁談話と初
めに出てきた箱根の自殺志願の青年佐原健二とへつながっていき
シナリオの名手井手俊郎さんのエンターテイメントの見本を見せ
てくれる。
 今回観てさらに簡単なシチュエーションだけでこんなにドラマ
をつくれるのかと感心してしまう。今特に邦画の脚本力と監督術
が落ちている中、若手の作家たちもいい勉強と参考になると思う。
限られたセットとシチュエーションをどうすれば面白くするか。
それは取りも直さず人間をいかに面白くみせるかに尽きる。
 そして又この映画を観ていて、働いて家庭をもって、共同体と
のつながりがあって、まじめに生きている日本人という姿の証言
映像を見た思いがした。
 これらは、今だとアニメの「サザエさん」の世界に残っている
幻の日本像だと言える。
 そして鈴木英夫監督というのは、本来サスペンスの名人で「彼
奴を逃がすな」や「殺人容疑者」などの名作がある。このあとも
劇場で再度観てみようと思う。
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by stgenya | 2010-04-25 12:49 | 映画・ドラマ

シャッター・アイランド

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「シャッター・アイランド」脚本レータ・カログリディス
原作デニス・ルヘイン,監督マーティン・スコセッシ、
主演レオナルド・ディカプリオ、M・ラファロ他。
公開初日の3.9億円の初動。順調な出だし。
 ディカプリオとスコセッシの四度のタック。しかも今回は
ミステリー。
まず画調を黒にこだわって、モノクロ映画を意識した調子に
なっている。また音楽が太鼓を重要な使い方して、黒澤映画
か小林正樹の「切腹」のような正調な画面をづくりにしている。
 舞台はボストン湾の孤島。精神刑務所。ここに捜査官が二人
でやって来るところからはじまる。海は荒れて、送り届けた船
の船長は嵐が来るからとすぐに引き返す。
 ここですでに密閉ミステリーの幕開け。そして一緒に上陸す
る相棒がタバコの火移しをディカプリオにする。この場面と迎
えに来た刑務官長の目線と顔をよく覚えておこうと目を見張った。
 なんせラストのどんでん返しがあるというのでそれぞれのカ
ットのつなぎを注意してみると、監督はキューブリック的なト
リック・カットをつないでいた。そして重要になるのが失踪し
た女患者の残したメモ「67番目の囚人」。66人しかいない。
これが最後のオチ。
そしてもうひとつ重要な要素が彼が見る「夢」だ。
 ディカプリオは、妻と子どもを放火で殺された過去があり、
その犯人がこの刑務所にいる。そいつを探して復讐しなければ
ならない。
その過去が夢で出てくる。
またもうひとつの夢が第二次大戦でナチに虐殺されたユダヤ人
たちの場面である。これは大過去だ。ディカプリオ扮する捜査
官の夢? これが違う。ここになぞ解きのヒントがあった。
つまりこのシナリオは、復讐の野心をもって入った捜査官の過
去描写から、いつの間にか別の人物の過去描写にすり替わって
いる。
ここにライターは神経を使い、監督のスコセッシは、この過去
描写を現実の画面に非現実として塗りこませることでなぞを散
りばめようとした。
 さて成功しているか、見た印象ではなかなか苦労しているな
あ、という感想をもった。「シャイニング」や「シックス・セ
ンス」のような鮮やかさはない。むしろ追い詰められた人間の
恐怖を映像的に描写しているのが面白かった。
 さすがスコセッシ教授。映画の引き出しはいくらでもある。
タルコフスキーの「ストーカー」的な水と建物のカットの美し
ささえ取り込んでいる。 そしていよいよなぞ解きのラスト近
く所長とディカプリオのカットバックの会話は正対目線である。
 演技としては、ディカプリオはともかく、ベン・キングズレ
ーとマックス・フォン・シドーの渋い演技には唸ってしまう。
やっぱり世界は役者の層が厚い。
 ただこの映画でひっかかったことがミシェル・ウィリアムズ
の妻が自分の子どもを三人殺すというストーリーポイントなエ
ピソードが出てくるが今の実母のこども虐待死を連日見せられ
ている日本人からすると作者や映画製作者が目論んでいたよう
なショックはなかった。
それはまた日本人としては悲しいことなんだけど。
 正直にいえば大好きなスコセッシの中であまり好みではない
「ケープ・フィア」の類型にこの映画は入る。もちろん「ケー
プ・フィア」より断然いい映画になっていると付け加えておか
ないといけないけど。
まあ、この映画は何回か見返して見ると良さがわかってくるの
かもしれない。
 
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by stgenya | 2010-04-16 17:15 | 映画・ドラマ