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新しい人生のはじめかた

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「新しい人生のはじめかた」脚本・監督ジョエル・ホプキンス
出演ダスティン・ホフマン、エマ・トンプソン、アイリーン・アトキンス
 老年のダスティン・ホフマンが見事な恋愛映画に不変の演技を見せている。
原題は、Lastchance Harveyと示す通り、ベテランCM作曲家の
人生をつかむ最後のチャンスに大人の恋愛を掲げてみせる。
 脚本がいい。少なくともこれぐらいの脚本は日本では東芝日曜劇場で
倉本聡や向田邦子などの作家がいくらでも書いた。
 そして映画青年たちは当時、テレビをバカにするようにダメな映画脚本
で甘い恋愛や家族劇を書くと「東芝日曜劇場」じゃないんだからと否定し
ほおり投げた。しかし今の邦画やテレビドラマの惨状をみると、とても
東芝日曜劇場をバカにするどころか、作家と作品の独自性や技術では
学ぶべきものが多かったことを今気づかされる。
 さて映画だが老作曲家が娘の結婚式でロンドンに大事な仕事のプレゼン
を残して行く。しかし花嫁の父の役は、元妻の新しい旦那がやることに
なり、孤独をかみしめる。そして仕事も若い作曲家に取られてしまう。
ふんだり蹴ったりのハーヴェイにカフェパブで同じく40女のケイトと
出会う。ケイトも合コンで若い女に相手を取られて又独りになったばかり。
 ふたりは、少しづつ意気投合して、人間は一人ではつまらない生活に
なる。最後まで男として女としての可能性を諦めないで生きようと思い
はじめる。
 そして不安でいっぱいのふたりが待ち合わせをする。
ここで自分を取り戻せると希望を持ちだしたとき、ある事態で待ち合わせ
がダメになる。しかしふたりは、最後にチャンスのしっぽをつかむ。
 この出会いとラストのふたりの決めのセリフがいい。そしてそれぞれに
前半どう孤独で孤立しているかをパラレルに描いて、ふたりのデートに
話を結びつける手法もなかなかスムーズでいい。
そして何よりダスティン・ホフマンの微妙な演技がリアルで弧舟を匂わ
せてうまい。それからエマ・トンプソンのオールドミスの哀愁が胸に
痛い。「アフリカの女王」のキャサリン・ヘップバーンを思わせる。
 こんな映画の企画を日本で出したらすぐにつぶされるだろう。
しかしだ。こんな話の映画は日本で毎年最低夏と冬に二本作られていた。
それは「男はつらいよ」だ。
 地方の港町に未亡人がひとり、あるいはオールドミスが一人いて
毎日の生活を精一杯生きている。そこへ渥美清の寅さんが来て、笑い
をもたらす。女は少しづつ変わっていく。この中年女の心のうごめきを
よく山田洋次は描いていた。ただ「ラストチャンスハーベイ」と違う
のは、そんな女には想っていた男がいて寅がふられるという喜劇の
エンディングの差だ。
 しかし寅さん映画もない今この「新しい人生のはじめかた」はとても
参考になる映画だと思う。
こういう映画がもっとヒットしてロングランしてほしい。
たとえ単館でも。
さすがダスティン・ホフマンはすごい。俳優の年のとりかたの手本だ
ともいえる。名画座でぜひ見てほしい。
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by stgenya | 2010-08-17 18:09 | 映画・ドラマ