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桐島、部活やめるってよ

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「桐島、部活やめるってよ」監督吉田大八、脚本喜安浩平、吉田大八
原作朝井リョウ、制作日テレアックスオン、配給ショウゲート。
 渋谷東急の昼で七割方の入り。圧倒的に若い男女が多かった。
久々に映画館で満足感のある映画を見たという気がした。
これは、平成の青春映画の傑作ではないかと感心した。
吉田監督は、その前の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」や
「パーマネント野ばら」で面白い演出をする人だなあと思っていた
のでこの新作は見たかった。
 高校生の五日間の学校を描いて、そのシナリオ構成と
人物引き出しが新鮮で思春期の揺れとリアルな空気をカメラ
につなぎとめることに見事に成功している。
 まず映画が始まって、メインタイトルがいつまでも出てこない。
そして最初の「金曜日」というタイトルが出て、
ホームルームから放課後へバレー部の花形・桐島を待つ
モデル並みの女子梨沙。
で又「金曜日」のタイトルで同じホームルームになる。
今度は帰宅部でイケメンの宏樹と友達、バトミントン部
のかすみと視点を変えて同じ時間を描写する。
つまり金曜日の放課後が四回もある。
運動部、文化部、帰宅部とそれぞれをスター桐島がいない
ということで変化していく生徒たちを初めの四パターン
で紹介していく。
パラレル構成であるがこれが適用されるのは、
この金曜と最後の火曜だけである。
そして文化部の映画部の前田たち(神木隆之介)は、
実は桐島とは直接関わっていない。毎回撮影しよう
とすると桐島を待つ宏樹を見たい吹奏楽部の部長
沢島亜矢(大後寿々花)と場所のとり合いでもめる。
もっともダサイ奴らということで描かれるが、
実はこの前田らがファーストシーンからラストまで
この物語の柱となっている。
とくに映画を観られた方は、ラストの屋上のゾンビ
映画撮影と桐島がいるとの情報で駆けつける運動部、
帰宅部、サポーター女子らの乱闘は、極めて映画的
である思ったことだろう。
そして何よりもラストのダサイ前田とイケメン帰宅部
の宏樹とのやりとりはいままでシナリオが積み重ねて
きたテーマが一気に噴き出す。
ここでやられたと思う。
体力もあり、女にも持てる、桐島パート2のような宏樹に
とって高校生活はなんだったのか、ここでダサイが世界
と映画をつくることでつながっている前田のことが
羨ましくもあったのではないだろうか。
 このシナリオを描いた喜安氏は、劇作家だということ
だから出来るだけリアルな高校生のセリフをうまく使い、
その群像劇を巧みな構成で仕上げた。
監督との本づくりに一年かかったというからこれも納得できる。
70年代の東陽一の「サード」、80年代の中原俊一の
「桜の園」などに匹敵するすばらしい青春映画になっていると思う。
 またアメリカ映画に置き換えればルーカスの「アメリカン
・グラフィティ」に通じる可笑しくて悲しいチキンたちの
記録映画と言えなくもない。
そして最後の最後でメインタイトルが出る。
「桐島、部活やめるってよ」
青春は、無様で滑稽で美しく残酷である。
誰もが味わい、通過していく命の発芽。
大スターは出ていないが、久々の清々しい映画である。
是非観て貰いたい。
観たあなたにとってラストの宏樹の涙は、どう映るか。
それを感じることができた人は、青春の傷痕が心の片隅に
微かにでも残っていると言えるでしょう。
 
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by stgenya | 2012-09-03 14:20 | 映画・ドラマ