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君の名は。

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「君の名は。」原作・脚本・編集・監督 新海誠 制作Comixwave
配給 東宝。28日目にて興収100億円突破。
 新海監督は、短編・中編のモノローグで語る私小説的な作風が特徴だった
けど今回は、練りに練ったエンターテイメント作品にして成功した。
 つまり予告で出て来る「転校生」的な内容の映画かと思っていたところに
話の中盤から大きく壮大な物語を紡いで行く。それも入れ替わりという
モチーフをラストまで生かして。
 それは、歩道橋で三葉と瀧がケイタイがつながらなくなった時点から一気に
展開する。瀧は、三葉に会いに行く。そして三葉の住んでいる飛騨に衝撃の
事実を知る。ここで時間軸がズレていたことが提示され、それを取り戻す
新たな物語に転換する。それも二転三転と。
 ここがいままでの新海作品と違う所だ。この激しい変化を107分に納めた
ために、あれ、あれはどうなっているんだろうと観客は頭の中で整理して
後半のカット一つ、セリフひとつを再吟味しようとしてもう一度見たくなる。
失われた時間、距離、記憶の新海三要素を今までと逆転してポジティブに
取り戻そうとして物語を書き上げたことが結果的にうまくいった。
これを可能にしたのは、最初に三葉の町と家族と神社のしきたりを20分
ぐらい長く見せていたことと入れ替わる二人が戻るとその記憶がなくなる
という決定的なカセを観客に印象づけたこととが大きい。
つまりズレた時間とふたりの距離と失った記憶をご神体に納めた口かみ酒
を瀧が飲むことでワープして、喪失の穴を埋めようと三葉になった瀧が
活躍し、ある自然災害を克服し、希望を取り戻すというドラマになった。
もちろん監督本人も言っている通り、3.11がここにかかわって来る。
あれだけスキな人の名前も忘れてしまう入れ替わり。
会いたいのに会えない切なさ。
それが時間が5年飛んで再会し、ラストの「君の名は?」となる上手さ。
森田芳光にしても相米しても岩井俊二にしても代表作はひとつあればいい。
それからするとこの作品は、新海誠の明らかに代表作になる。
思えばだった一人でCGアニメを自主制作して始った若者が100億の大作
を手がけてしまう時代なのだ。師弟もなくプロの現場経験もなくできて
しまう。これは、大きなことだ。
この夏、この映画に熱中した少年少女の中に第二の新海誠が、宮崎駿が
出て来ないとこも限らない。
そして東宝が最初15億いってくれれば御の字だった「君の名は。」が
ここまで大化けしたのにびっくりしているだろう。
夏休みの最後8/26公開、しかも渋谷や池袋、有楽町などメインでTOHOの小屋
からはじき出されて、キャパの少ない劇場になってしまった。
でもこれが逆に新海にはプラスになった。
劇場が小さいから連日超満員。これがニュースに。そして後半の町を
救うシークウェンスが端折った(ここは、もっとうまい編集があったと
思う)ために10代20代がもう一度見ないとわからないとリピーターに
なったこと。あらゆることが幸運に動いた。
次が大変だろうが新海監督には、是非頑張ってもらいたい。
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by stgenya | 2016-09-26 01:50 | 映画・ドラマ
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